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“年収2000万円JALパイロット”の肩書を捨て…日本人初のNFL選手に一番近い26歳「課題は英語ですね」【アメフト】
posted2021/04/17 11:00
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
本人提供
先日、プロゴルフの松山英樹選手が日本人で初めて海外メジャーを制した。
近年はゴルフだけでなく、スポーツの分野で日本人選手の世界を舞台にした活躍が目覚ましい。これまで「日本人には不可能」と言われ続けてきた世界への扉を、多くの選手がこじ開けはじめている。
そんななかで、北米4大スポーツで唯一、アメリカンフットボールのNFLだけは、いまだ日本人には未踏の地となっている。だがいま、そんな最高峰の頂に手をかけつつある選手がいる。26歳の李卓(り・たく)だ。
李はいま、インターナショナル・プレーヤー・パスウェー・プログラム(IPP)と呼ばれるプログラムへの参加を目指し、9カ国11人の中で競いあっている。IPPは北米以外の国の有望な選手にも、NFL選手として契約のチャンスを与えるために2017年に開始されたプログラムだ。数カ月にわたる選考を通して実力を認められれば、実際のNFLチームへの帯同契約を結ぶことができる。
現在、李は選考の中でトップクラスの評価を得ており、チームへの帯同契約を手にする可能性も十分にある。では、李はいかにしてここまでたどり着いたのだろうか?
◆◆◆
「慶応大への進学も決まっているし……」
「これ、本当に同じ競技なのかな……? 日本のアメフトと全然、レベルが違う。何よりカッコよさが全然違う!」
高校3年生の李少年は、初めて見るアメリカのカレッジフットボールに衝撃を受けた。
目の前で繰り広げられるプレーは、中学時代から自分がプレーしてきた競技と同じものとは思えないほどハイレベル。数万人を収容するスタジアムを埋めた観客たちは、ひとつひとつのプレーで熱狂し、これまで見たことのない盛り上がりをみせていた。
「高校3年生の秋頃ですかね。高校OBの方のツテで、アメリカでスポーツエージェントをやっている方に招待してもらって、UCLAとアリゾナのカレッジの試合を観戦することができたんです。プレーのレベルの高さにもビックリしましたけど……とにかくスタジアムの雰囲気も、選手たちのパフォーマンスも、すべてが『カッコいい!』という感想だったのを覚えていますね」
そんな李少年にさらなる驚きを与えたのが、そのエージェント氏の言葉だった。
「もし卓がアメリカでプレーしたいなら、短大に入学してUCLAに編入するという方法だってある。本気でチャレンジするつもりがあるなら、そういう道もあるんだよ」
李少年は一瞬だけ、悩んだ。