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【桜花賞】“天性のスター”白毛馬ソダシに「不吉な材料」が? “良血中の良血” “ものすごい大物感”など濃厚キャラ4頭も揃い大混戦
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byPhotostud
posted2021/04/08 17:02
ソダシは中央4勝のブチコの18年初仔。20年、GIII連勝後の阪神JFではサトノレイナスをハナ差抑え史上初白毛馬GI勝利。4戦全勝中
チューリップ賞の勝ち馬が“2頭”
桜花賞と最も相性がいいステップレースはチューリップ賞(GII)だ。阪神芝1600mという本番と同じ舞台で、そこから中4週。当然、毎年いいメンバーが揃うわけで、データも「本番直結」を示唆。過去10年で3着以内に入った馬は18頭。上位独占も2例あり、最重視すべきと伝えている。今年は珍しい1着同着という結果で、勝ち馬が2頭出た。
メイケイエールは、いまどき珍しいぐらいのお転婆だ。どんな馬とも折り合ってみせる武豊騎手でさえ、操縦にアタフタする場面が再三。特にチューリップ賞は事故寸前とも思えたほどで、中盤までは内ラチにぶつかりそうになったり、先行馬に追突しそうになったりの破天荒ぶりだった。3コーナーでわずかに進路が開いたのを見逃さずに一気に先頭に行ったが、仕掛けたわけではなく堪えきれずにというのが真相。タイミングとしてはあまりにも早すぎるわけで、武自身が「最下位も覚悟した」と振り返っている。案の定、直線に向いた早々に甘くなったが、そこから他馬の追撃をギリギリ凌ぎ切ったのが桁外れの能力の高さなのだろう。
武英智調教師は「長い写真判定になったので、検量室前で5分ぐらい周回していたでしょうか。引いていた担当者から“もう、息が入りました”と報告があって2度驚きました。あんな無理な競馬をしたのに、ほんの短時間で呼吸数も心音も平時に戻るなんて、この馬の心肺機能はとんでもないなと再確認しました」と、目を丸くしながらそう語るのだ。
「折り合いにはかなり苦労していた」もう一頭
手の内に入れかけていた武騎手が右足の甲の骨折で騎乗不可となったのは小さくない誤算だが、武英智師はすぐに横山典弘騎手に代打をオファーして快諾を得ている。「あれほど行きたがってハミをガチガチに噛んでいたのに、先頭に立った瞬間、フッと力みが抜けた気がします」という武の貴重な感触も、1期先輩の横山典に伝えられている。
メイケイエールの母シロインジャーは、ソダシの母ブチコの姉という白毛一族。毛色は受け継がなかったが、気性のキツさだけはしっかりと継承されたようだ。近い親戚同士の桜花賞対決というのも、非常に興味深い。ちなみに、武豊と武英智も親戚関係だ。
チューリップ賞もう一頭の勝ち馬は、エリザベスタワーだ。12月の阪神芝1600mの新馬戦で直線一気の末脚を炸裂させたときの鞍上が武豊騎手で、2戦目に選んだエルフィンS(中京芝1600m、リステッド)の凡走に誰よりも首をひねっていたのもその人だった。もし、エルフィンSで連勝していればチューリップ賞はスキップしていたはずで、そのケースで武が桜花賞でどちらを選ぶかは大いに迷うところだったろう。それほどの超素質馬なのだ。ただし、この時期の未完成の牝馬らしく課題も少なくない。メイケイエールの大暴れの陰に隠れて目立たなかったが、「こちらも折り合いにはかなり苦労していた」と高野調教師も認めている。それでも、川田将雅騎手が続けて騎乗するのは好材料。例年スローにはならない桜花賞なら、もっと乗りやすくなるという観測も無理ではない。