良血馬中の良血馬・アカイトリノムスメ

　良血馬中の良血馬ということなら、アカイトリノムスメがここでも傑出した存在だろう。母は'10年の牝馬三冠馬でGIを5勝した名牝アパパネ。ディープインパクトを含めて、父も母も娘もぜんぶ金子真人オーナーの所有馬で、この桜花賞ではソダシとのワンツーを狙っている。デビュー戦を負けて、そのあとをポンポンと勝ち進むところも母と同じで、接戦をモノにするセンスの良さが血の確かさを物語っている。前走クイーンC（東京芝1600m、GIII）など、4戦中3戦に騎乗してきた戸崎圭太騎手がドバイ遠征後の待機期間に入るため騎乗できない事情はあるが、赤松賞Vに導いた横山武史騎手なら文句はない。昨年、初の関東リーディングに輝いた22歳が、初のクラシックに届くシーンも見てみたい。

　アーモンドアイを史上未到のGIV9という大団円で牧場に送り出した国枝厩舎は、この桜花賞にもう一頭サトノレイナスという、ものすごい大物感を漂わせる鋭脚の持ち主をも出陣させる。鞍上は、競馬ファンからいま最も信頼されている騎手クリストフ・ルメール。前走の阪神ジュベナイルフィリーズは2着に甘んじたが、ソダシと僅かにハナ差。あまたいる騎乗候補から、揺るぎなくこの馬を選んだところにも自信が見える。ちなみに、フジテレビの競馬中継で解説役をつとめている安藤勝己さんも、今年の桜花賞で乗ってみたい馬を問われて、「まだまだ伸びシロがありそうなサトノレイナス」と即答していたのがますます不気味だ。

　大ブレーク中の松山弘平騎手が、チューリップ賞3着のストゥーティを差し置いてパートナーに選んだのが、アールドヴィーヴル（父キングカメハメハ、母イサベル、栗東・今野貞一厩舎）。2戦目でクイーンC2着。これがアカイトリノムスメとクビ差で、この収得賞金で出られると見切ってトライアルをパスした陣営の判断にも凄みを感じる。紅梅S（中京芝1400m、リステッド）勝ちの内容が良かったソングライン（父キズナ、母ルミナスパレード、美浦・林徹厩舎）も、大一番に強い池添謙一の手綱で警戒が必要だろう。

　今年の桜花賞は、濃厚なキャラがひしめき合う大混戦。筋書きのないドラマの結末は、桜が散っていたとしても華やかなものになるはずだ。

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