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【桜花賞】“天性のスター”白毛馬ソダシに「不吉な材料」が? “良血中の良血” “ものすごい大物感”など濃厚キャラ4頭も揃い大混戦
posted2021/04/08 17:02
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Photostud
この世代の2歳牝馬チャンピオンに輝いたソダシは、世界的にも極めて希少な白毛のサラブレッド。テレビの競馬中継でもはっきりとわかる、1頭だけバーチャルかと思うような純白の馬体が躍動し、力強く抜け出してくる姿はそれだけで一見の価値がある。まさに生まれながらのスターホースだ。
'90年頃に大ブームを巻き起こしたオグリキャップは、種牡馬となってから真っ白な被毛に覆われたが、現役時は精悍なグレーだった。幼少期は黒っぽく、馬齢を重ねるごとに白くなっていく芦毛とは違って、白毛は生まれたときから輝くような真っ白。被毛の下には白毛ならではのピンク色の肌が隠れている。ソダシは日本の競馬史における27頭目の白毛馬だが、その純白の美しさは史上ナンバー1。お母さんのブチコはその名の通りのブチ模様で、ディズニー映画『101匹わんちゃん』でおなじみのダルメシアンを思わせる可愛らしさが魅力だった。しかし、ソダシが受け継いだ風貌は神馬を思わせる神々しさ。馬名の由来も、サンスクリット語で「純粋、輝き」。日本の白毛系統のほとんどをコレクションして発展させてきた金子真人オーナーの取っておきの命名に違いない。
「クラシックに主役で臨めるのは騎手冥利に尽きる」
しかも、ソダシは美しいだけの馬ではなかった。昨夏の函館の芝1800mの新馬戦を快勝したあと、札幌2歳S(札幌芝1800m、GIII)、アルテミスS(東京芝1600m、GIII)、阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神芝1600m、GI)と、全て好位差しの安定した取り口での4連勝。全戦で手綱を任されてきた吉田隼人騎手が、「馬格(470kg台)以上にストライドが大きい馬で、長くいい脚を使える馬です。この血統は、ブチコの姉のユキチャンや、シロクン、マーブルケーキといった一族に乗せてもらっていて、どれもダートがベターと感じさせる走りでした。ですから芝の新馬戦の依頼をお受けしたときでさえ、実は半信半疑だったんです。気性がきつくて燃え上がりやすいのも、この血筋に共通した特徴でしょうか」と、見た目の安定感とは違う難しさを明かしたが、結果を積み重ねることで確かな自信もつかんでいるのがわかる。
「白毛というだけでも注目されるのに、その馬に乗せてもらってクラシックに主役で臨めるのは騎手冥利に尽きることです」と、寡黙な男が1番人気ドンと来いの表情で訴えるのだ。京都競馬場の工事による休止の影響で、阪神の馬場がパワー勝負になりやすいのもソダシの背中を押している。ただしデータ面からは、12月の阪神ジュベナイルフィリーズからの直行というローテーションに黄信号が指摘される。過去10年の記録では、'14年のレッドリヴェールの2着があるのみという、ちょっと不吉な材料も覚えておかれたい。