酒の肴に野球の記録BACK NUMBER

選手全員が出場、球数と送りバント制限… 公立校と甲子園常連校が“Win-Win”のリーグ戦とは【大阪・新潟・長野で開催】 

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

PROFILE

photograph byKou Hiroo

posted2021/04/01 11:03

選手全員が出場、球数と送りバント制限… 公立校と甲子園常連校が“Win-Win”のリーグ戦とは【大阪・新潟・長野で開催】<Number Web> photograph by Kou Hiroo

Liga Futura長野に参加したチームのベンチ内での様子を、特別に撮影させてもらった

 Liga Futuraでは、選手たちは相手選手がいいプレーをしたときも「ナイスショート!」と声をかける。

 これは選手たちが座学で「スポーツマンシップ」を学んでいることが大きいと思う。日本のスポーツ大会では「スポーツマンシップに則って」と選手宣誓をするのが常だが、あらためて「スポーツマンとは"良き仲間"のことだ」という考え方の基本に触れることで、目から鱗が落ちる選手も多いようだ。

公立と私学の文化の違いを感じることは多い

 高校野球の取材をしていると「公立」と「私学」の文化の違いを感じることが多い。

 多くの地域では両者の交流はそれほど多くない。

 公立高校は「横のつながり」が大きい。20代の指導者は数年ごとに学校を異動する。ある高校で年長の監督のもと部長やコーチをしていた若手の指導者が、翌年は県内他校の監督になることも多い。Liga Futuraにも、監督同士が師弟関係にある学校がある。そういうこともあって公立高校の指導者は仲間意識が強く、多種多様なことを相談し合ったりする。

 これに対して私学は「縦のつながり」が強い。監督は長年チームを指導する。その教え子が卒業後、学校に戻ってきてコーチを務めるパターンが多い。特に強豪校の場合、監督の考え方が「イズム」となって、チームに深く根を下ろしている。このように私学と公立は、文化が違うため、あまり交流していないケースも多いのだ。

指導者たちが理念を共有できるメリット

 Liga Futuraではリーグ戦の運営について私学と公立の指導者がひざを交えて話すことが多くなる。私学の多くは実戦の機会を求めて参加している。当初、私学の指導者はリーグ戦のコンセプトへの理解は必ずしも深くはないようだが、戦ううちに次第にその意味が分かってくる。コミュニケーションを取ることで「なるほどなあ」と頷く監督も出てくるのだ。

 このように、指導者たちが理念を共有していくのもリーグ戦の大きなメリットだと思う。

 この日3試合の結果、寸評は以下の通り。

 <第1試合/佐久長聖16-3塩尻志学館>
 佐久長聖は春夏合わせて甲子園9回出場の強豪私学。今年からリーグに加盟したが、関西などから来た選手も多く、実力的には抜きんでている。この日の試合では圧勝していたものの、「球数制限」「全員出場」というルールによって、実力差が縮まり、リーグ戦では4勝2敗だった。

【次ページ】 甲子園常連校が打ちあぐんだ“意外な投手”とは

BACK 1 2 3 4 NEXT
小諸高校
佐久長聖高校
長野吉田高校
上田千曲高校
塩尻志学館高校
飯田風越高校
田川高校
長野工業高校

高校野球の前後の記事

ページトップ