酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
選手全員が出場、球数と送りバント制限… 公立校と甲子園常連校が“Win-Win”のリーグ戦とは【大阪・新潟・長野で開催】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/04/01 11:03
Liga Futura長野に参加したチームのベンチ内での様子を、特別に撮影させてもらった
長野県のリーグ戦を観に行ってみると……
秋の長野県のリーグ戦は各校のグラウンドで行われた。筆者はこれも観に行ったが、手作り感のあるいい試合だった。
一冬を越えての決勝トーナメントは、長野県南部の飯田市、綿半飯田野球場で行われた。決勝だけは本格的な球場で、ということなのだ。
試合を見ていてすぐに感じるのは「打球が飛ばない」ということだ。低反発の金属バットは「カシっ」と鈍い音がする。振りぬいたように見えても失速する打球も多い。
小諸高校の丸山雄三監督は「低反発金属バットは芯を食わないとしっかり飛ばない。ごまかしがきかない」と話す。
飛ばないバットだから、投手は長打を恐れずストライクゾーンにどんどん投げ込むことができる。打球が遅いから野手も思い切って突っ込むことができる。「投げる」「打つ」「捕る」という野球の原点に立ち返った野球ができるのだ。
選手自身が作戦を立てて、全員が試合に出られる
また「球数制限」があるから、各チームは複数の投手を用意しなければならない。経験値が少なかったり実力的に劣る投手でもマウンドに上がることになる。実力差があるチーム同士の対戦でも、往々にして接戦になったりする。
これらはLiga Futuraが、もともと期待していた効果だ。勝ち負けに過度に拘らず野球本来の楽しさ、魅力に取り戻すことを目指していた。
それ以外にも――筆者が観るところ、Liga Futuraではいろいろな“化学変化”のようなものが生じているようだ。
まず、ベンチでは選手の表情が明るい。多くのチームでは選手自身が作戦を立てている。Liga Futuraでは、選手が主役だ。監督は三塁コーチを務めたりしているが、選手を見守る役割に徹している。
それに「全員試合に出られる」ことが、選手の表情を明るくしているのではないかとも思う。