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「力が入らなくて『やばいな』」 センバツNo.1エース畔柳亨丞の異変と“140km超なし+変化球68%”の一部始終

posted2021/04/01 06:00

 
「力が入らなくて『やばいな』」 センバツNo.1エース畔柳亨丞の異変と“140km超なし+変化球68%”の一部始終<Number Web> photograph by Kyodo News

2番手投手としての登板になった畔柳。状態が万全でなかったことを自覚していた

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間淳

間淳Jun Aida

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 三塁側ブルペンが急に慌ただしくなった。センバツ決勝をかけた明豊との一戦。今大会ナンバーワン投手の呼び声が高い中京大中京の畔柳亨丞は、ベンチスタートだった。

 0-0で迎えた4回。ここまで無失点と好投していた中京大中京の背番号「10」柴田青は、安打と四球でノーアウト一、二塁のピンチを招く。ここで、畔柳がブルペンに向かった。

 畔柳は3回まで裏方に徹していた。新型コロナウイルス対策で他の控え選手と同じようにマスクをつけて、ベンチから仲間を見守った。2回に捕手の加藤優翔が先頭で打席に入る前、レガースを外すのを手伝い、守備につく際にはグラウンドにひざをついてレガースをつけた。攻守交替のときにはチームメートにペットボトルの水を手渡した。

「疲れがすごく溜まっていて、あまり投げられる状態ではなかった。柴田が絶対につないでくれると信じて、柴田の投球を見ていた」

この日の朝、中継ぎ待機が伝えられた

 畔柳はこの日の朝、高橋源一郎監督から中継ぎで待機するよう伝えられた。

 当初の予定は6回からの登板だった。試合の行方を気にかけながら、ブルペンで捕手を立たせて肩をつくるが、チームのピンチは広がっていく。犠打と死球で満塁とされ、打席には明豊の7番・塘原俊平。ファウルで粘られ、中京大中京の柴田は投げる球の選択肢がなくなっていく。

 7球目のチェンジアップをレフトに運ばれ、犠飛で先制点を許した。続く太田虎次朗にもライト前へ弾き返されて2点目を失う。ブルペンの畔柳は、ここで捕手を座らせた。マウンドの柴田の方へ何度か視線を向け、急ピッチで準備を進める。だが、柴田は明豊の勢いを止めることができない。9番・簑原英明と1番・阿南心雄にも連続タイムリーを許し、点差を5点まで広げられた。

 高橋監督のゲームプランは畔柳以外の投手をつないで2、3点ビハインドで辛抱し、終盤に畔柳を投入して逆転するものだった。初回から大江嶺と大矢流晟、2人の投手に肩をつくらせていた。

【次ページ】 「いけるか。準備ができたら……」

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