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リバプールはU-6から…アメリカ代表で若手台頭の要因、欧州ビッグクラブ“アカデミー”の実態【バイエルンもバルサも】
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byGetty Images
posted2021/03/28 17:01
バイエルン時代には出場機会に恵まれなかったクリス・リチャーズだが、レンタル移籍先のホッフェンハイムでは順調に経験を積んでいる
もちろん彼らには確固とした意志がある。存在感を示し、勝利を渇望する強い気持ちもある。ポーランドでおこなわれた2019年のU20W杯のラウンド16でアメリカは、フランスを3対2で破り準々決勝に進んだ。
この若い世代が才能を開花させるためには手段を必要とした。それもアメリカの広大な国土を考慮すれば複数の設備を要した。USサッカーは1999年、17歳以下のための育成施設であるブラデントン・レジデンシーをフロリダに設立した。フランスにおけるクレールフォンテーンと同様の地位を占めるこの施設は3年前に閉鎖されたが、MLSが創設した育成センターがその役割を引き継いでいる。ただ、コロナ禍の影響で現在は活動が停滞気味で、真の起爆剤となっているのはクラブが設立したプライベートなアカデミー――とりわけアメリカを潜在的なエルドラドと見なしているヨーロッパのビッグクラブのアカデミーである。
リバプールは10のアカデミーを持ち、ふたつはカリフォルニアに置かれている。そこで育成されているのは、U6からU17までの4000~5000人の子供たちである。バルセロナはアリゾナに充実した施設を作りあげた。そこからはシャルケに所属する19歳のマシュー・ホッペや、将来のクラッキ候補で現在はニューヨーク・レッドブルズでプレーする17歳のケイデン・クラークが頭角を現した。
一方、バイエルンは、マサチューセッツに本拠を置き16州で育成システムを展開して9万2000人以上の子供たちを育てたグローバル・プレミア・サッカー(GPS)とパートナーシップを提携した。GPSもコロナ禍により昨年6月に活動を停止したが、クリス・リチャーズやカナダ出身のアルフォンソ・デイビス(バイエルン)が巣立っていった。バイエルンは他にもFCダラスやデンバー大学とも提携関係を結び、活動を強化している。
成長の舞台としてのブンデスリーガ
アメリカ人選手たちに成長の機会を与える点で、ブンデスリーガの果たす役割は大きい。バイエルンだけに限らず、ホッフェンハイムもさきごろFCシンシナティとパートナーシップを結んだ。今日の代表でいえば、バーホルターが招集したうちの10人が、現在またはかつてブンデスリーガのクラブに在籍し、その割合はチームの40%に達する。プリシッチが元ドルトムント、サージェントがブレーメン、アダムスがRBライプツィヒ、リチャーズがバイエルン、ステフェンが元デュッセルドルフ、レイナがドルトムント、ブルックスがヴォルフスブルク、マッケニーが元シャルケ、ソトが元ハノーファーである。