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39歳松井大輔が明かす“ベトナム電撃移籍”の真相「先生として、プロとしての振る舞いなどを伝えて欲しいと」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byサイゴンFC
posted2021/03/28 11:02
昨年12月急遽、ベトナム1部リーグサイゴンFCへ移籍した松井大輔
プロ選手だけど「“プロ”というものを知らない人が多い」
2020年サイゴンFCの共同オーナーとなり、現在CEOのチャン・ホア・ビンは、日本の大学を卒業後、ユニ・チャームを経て、花王のマーケティング本部長などを務めたキャリアを持つ。20年余り日本との関わりがある人物で、昨年のFC東京との業務提携に続き、今年になってFC琉球とアジアストラテジックパートナーシップ契約も締結した。さらに、ベトナム人選手をJ2の琉球へ送り出す計画もあるという。クラブスポンサーには、日本航空やJTBをはじめ日系企業も名を連ねる。
ビンはサイゴンFCの日本化を目指して、Jリーグのようなクラブ経営、選手育成、地域貢献などを実践したいと公言している。そうすることでベトナム代表を強化し、ベトナムのサッカーを発展させたいという。
「ビンさんは、サイゴンFCをアジアのなかで活躍できる大きなクラブにして、そこからベトナム代表を輩出し、さらにJリーグへ選手を送りたいと考えている。Jリーグで活躍するベトナム人選手がいることで、ベトナムのサッカーやクラブの価値を上げたいと」
タイ同様に欧州サッカーの熱心なファンも多いベトナム。2019年に初めて予選を突破してアジアカップ出場を果たしたベトナム代表の人気は急上昇している。2000年にプロ化されVリーグも誕生したが、「人気はまだまだこれから」と松井はいう。
「プロの選手はいるけれど、いわゆる『プロ』としての振る舞い、行動はどういうものなのかを知らない人は多いと思う。何時に寝るとか、食事の時間や野菜を食べなくちゃいけないという単純なことをわかっていない。僕らにとって当たり前だと思うことが当たり前じゃないから。練習前に30分エクササイズすることや練習後のアイシングも知らない。そういう場所で、僕の行動はみんなに見られていると感じるよ。ピッチ内もピッチ外もね」
サッカー選手としてはもちろんだが、それ以前の人間・松井大輔に寄せられた期待は大きい。
「チームにいる僕ら日本人選手からサッカー選手としての考え方だけじゃなくて、日本の勤勉さやおもてなしの心、日本のよいところを学んでほしいと。だから僕にも『先生として、プロサッカー選手としての振る舞いや考え方、日本人の考え方などを伝えて、ベトナム人選手が人間力を上げるサポートをしてほしい』と言ってくれた」
教えることにハマって「僕も歳をとったなあ(笑)」
そんななかで、以前なら若手に教えることにわずかな違和感があったが、最近は面白さを感じるようになったという。そして、若い選手も多いサイゴンFCでは、必然的にそういう場面が増えた。