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「あ、このタイミングか」豪・南ア・NZの技を“見て盗んだ”SH日和佐篤、33歳でも成長期? 神戸製鋼でトライ率UP
posted2021/03/26 17:03
text by
倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko
photograph by
Yoshio Tsunoda/AFLO
年齢は関係ないと、多くのアスリートが口にする。うまくなりたい選手は、30歳をすぎてもうまくなるのだ、と。神戸製鋼のスクラムハーフ、日和佐篤もその1人。
「神戸に来て、今までの自分になかったものを手に入れましたね」
33歳、伸び盛りのまっただ中にいる。
数字が“成長期”の一端を示す。2017-18年シーズンまで在籍したサントリーでの8年間は、122試合(プレーオフ、日本選手権を含む)に出場して9トライだったが、神戸製鋼では2シーズン16試合で6トライも挙げている。日本代表の全キャップ数51を築いたサントリー時代よりも、トライを奪う確率がグンと上がっているのだ。
世界の技をコピーして、アレンジする
トライへの嗅覚が鋭くなったのは、同じSHのお手本の存在が大きい。アンドリュー・エリスがその人。ニュージーランド代表28キャップの名手で、神戸製鋼に昨季までの6年間在籍。確かな技術と明るいキャラクターで、18-19年のトップリーグ王者を支えた功労者だ。
エリスは、仲間が突破した時、必ずと言っていいほど、影武者のようにサポートに走っていた。ラストパスをもらってトライというシーンが、神戸製鋼の決まり手の一つになっていた。
「エリスのことを、僕が勝手に手本にしていた。ニュージーランド人のすごいところは、サポートコース。ビデオじゃ見られないところを間近で見られたことで、気付きになり、成長につながったと思っている」
好漢のエリスに聞けば、テクニックを丁寧に教えてくれただろう。だが、そこはプロ同士。同じポジションのライバルでもある。全部が全部を聞けない。試合でも実戦形式でも、元オールブラックスの動きをひたすら観察した。目に焼き付けたコース取りを、グラウンドでマネした。
「神戸に来た当初、最初の3、4カ月はできなかった。あ、今のはサポートしないと、と思うことが多かった。頭で分かっていても体が動かなかった。でも、ある瞬間から、あ、このタイミングか、というのがちょっとずつ分かってきた」
サントリー時代は、チームメイトだったオーストラリア代表139キャップのジョージ・グレーガン、南アフリカ代表76キャップのフーリー・デュプレアが生きた教材になった。世界の技をコピーして、アレンジして、オリジナルにしてきた。神戸製鋼でもエリスから吸収した。どれだけコーチングが発達し、分析ソフトが高性能になったとしても、技術習得の肝は変わらない。“見て盗め”だ。