酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
低所得など社会事情も影響? 沖縄の“野球離れ”に甲子園準V腕&元巨人・ダイエーの大野倫氏はどう向き合うか
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/03/24 06:01
故郷・沖縄での野球普及に取り組んでいる大野倫氏
学校の授業に組み込むという形がユニークだ。多くの沖縄県民にとって、大野倫は、甲子園で活躍したヒーローだ。そのヒーローが学校で授業をするのだ。おそらく、子どもたち以上に往時を知る大人が期待感を抱いたのではないか。
ただ――少しずつ手ごたえを感じつつあったさなかに、新型コロナ禍に見舞われた。生活が変わる中、この1年の大野倫氏は、どんな活動になったのか?
「これは野球どころじゃない」と思うほどの状況とは
「未就学児童の野球教室は、昨年、緊急事態宣言が発出されてからは一切活動できませんでした。でも9月頃から活動を再開しました。
再開するときに先生方に話を聞くと、子どもたちが肥満になったり、家に引きこもることを覚えてしまって、緊急事態宣言が解除になっても外で遊ばない子が増えた、と言っていました。だから授業を再開するときには、どうなるのか、と少し緊張感がありました」
――大野氏は野球を通じて10年以上子どもたちと接しています。顔を見れば、今、どんな感情なのかを読み取ることができるのではないでしょうか。
「子どもたちは、すべてにおいてトーンダウンしていました。勉強も集中力もないし、運動もできないし。でも家に引きこもっていれば、ゲームがある、スマホがある。面白いし疲れない。そういうことを子どもが学習してしまった。そうなってしまった子を、もう一度外に引っ張り出して、身体を動かそうとさせるのは簡単ではないだろう。これは野球どころじゃないな、とにかく、子どもたちを日に当てて運動させよう、汗を掻かせようと思いました。
ただ、いざ授業を始めてみると、子どもたちの反応は予想以上に良かったですね。運動に飢えていることを痛感しました。ただ、この状況を見ると学校の先生方も苦しいだろうなとも思いました」
低所得の社会事情が子どもにも影響
――コロナ以前から、沖縄県は近年、子どもを取り巻く環境が悪化しつつあると聞きます。