酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
低所得など社会事情も影響? 沖縄の“野球離れ”に甲子園準V腕&元巨人・ダイエーの大野倫氏はどう向き合うか
posted2021/03/24 06:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
沖縄水産から九州共立大に進んだ大野倫氏は、大学屈指の強打者となり、1996年ドラフト5位で巨人に入団。外野手として活躍が期待されたが、レギュラーの座をつかむことはできず、ダイエー移籍を経て2002年に引退。その後は九州共立大職員を経て故郷沖縄で野球指導者になっている。
沖縄では中学硬式野球の「うるま東ボーイズ」を指導する傍ら、一昨年から小学校低学年、未就学児への野球教室を実施している。
沖縄県から野球が消えてしまうんじゃないか
「うちの次男は、小学校の野球チームに入っていたのですが、息子の野球チームのサポートをしているうちに、沖縄県でも野球人口の減少が深刻なことに気が付いたんです。
少年野球大会の入場行進を見ていると、チームの列がどんどん短くなっている。特に小学校低学年で野球を始める子どもがほとんどいない。少子化もあるでしょうが野球人口の減少は、それをさらに上回っている。
野球は子どもの送迎やお茶当番など親の負担が大きいですし、お金もかかります。沖縄は共働き世帯が多いので、親が野球をさせたがらないんですね。それに沖縄でも空地が少なくなっているうえに、ボール遊びが禁止のところが増えている。このままいったら沖縄県から野球が消えてしまうんじゃないか、そんな危機感を持ちました」
――そこで2019年3月にNPO法人野球未来.Ryukyuを立ち上げ、野球普及活動に乗り出したそうですね。
「野球の普及イベントは、いろいろな組織がやっていますが、単発のものが多いんです。僕は日常的に野球に触れる機会を提供することが大事だと思いました。
そこでNPO法人を立ち上げ、学校の授業に野球教室を組み入れてもらうことにしました。
45分という通常の体育授業の中で、僕が野球を教えます。終わりのチャイムが鳴ったら次の授業に行ってもらうという感じです。授業時間内だから、学校に時間を取ってもらうなどの負担はないし、イベントとして構えることもない。また僕の授業はお金はいただきません。NPO法人は寄付やスポンサードで賄っています」