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六大学野球で絶対的レギュラーではなかったのに…社会人野球で急成長中の野手“ドラフト注目の2人”
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/24 17:03
明治安田生命・高瀬雄大遊撃手。明治大時代(写真)はショートに渡邊佳明(現楽天)がいてレギュラーになりきれなかった
(1)高瀬雄大「キャッチボールのできる遊撃手」
明治大では遊撃に渡邊佳明(横浜高、現楽天)がいてレギュラーになりきれなかった高瀬だが、一級品の身体能力と野球センスは知る人ぞ知るところだった。それが、明治安田生命では1年目から「1番・ショートストップ」として起用され、一気に素質が開花した。
社会人2年目だった昨季はドラフト候補にも挙げられたが、コロナのために実力をアピールする機会に恵まれず、今季が「仕切り直し」。高瀬の持ち味は、正確なスローイングだ。
捕ればアウト……この日、練習と実戦で見せたスローイングは、三遊間からの一塁ワンバウンドスローも含めて、すべてが一塁手の顔か胸にピシャリ。二塁けん制の投手への返球のスナップスローも、しっかり指がかかって、投手の顔面付近に集中。フォームを見れば、安心できる。
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踏み込んだ左足に自然に体重が移って、頭が動かない。身のこなしの美しさすら感じる鮮やかな「キャッチボール」のできる遊撃手だ。
長崎西高では「エース」だった
なーんだ……と思われるかもしれないが、野球でいちばん大切なキャッチボールが下手な選手がどれだけいることか。今の時代、スローイングミスのない選手を見つけるのが、どんなに難しいか。「貴重な人材」として挙げたい“逸材”だ。
一昨年、ルーキーの頃の高瀬は、レギュラーに抜擢された喜びを体じゅうで表現するように、弾かれたようなアクションがとてもフレッシュに映ったが、2年間の経験でそうした“色”が落ち着いて、“味”になりつつある……そんな印象だ。
ムダに急がない、それでもキッチリ間に合わせる。安心して見ていられるフィールディングになってきた。
長崎西高ではエースとして投げるのが本業だった。明治大でも、試合に出るようになった3年生以降も、一塁手だったり三塁手だったり、実は「遊撃手」としてのキャリアはまだ浅い。
盗塁阻止の二塁ベース上でのタッチプレーがショートバウンドになった時のような「応用問題」には、まだ“不慣れ”が時々顔を出す。その点に関しては、子どもの頃からショートひと筋の「遊撃小僧」のとっさの力にはかなわない。徹底的に数をこなして、体に感覚を刷り込んで慣れるしか手はない。