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桜庭和志プロデュース“QUINTET”には「甲子園の感動」が? 女子団体巴戦でのドラマに“桜庭の息子”の登場も 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byQUINTET

posted2021/03/22 11:00

桜庭和志プロデュース“QUINTET”には「甲子園の感動」が?  女子団体巴戦でのドラマに“桜庭の息子”の登場も<Number Web> photograph by QUINTET

2月12日の女子大会は強豪柔術アカデミーの選抜選手で構成されたTEAM CARPE DIEMが優勝した

格闘技の特徴は攻撃に出るから

 柔術の世界ではグラップリングが「ノーギ」と言われることもある。ギ(道着)なしの柔術という捉え方だ。だが桜庭はレスリング出身。彼が創始したQUINTETでは試合のテンポがオリンピックで見るレスリングや柔道に近くなる。選手には攻撃する姿を見せてほしいのだと桜庭。

「いろんな格闘技がありますけど、それぞれの特徴は攻撃に出るわけじゃないですか。それを出してね、ということです」

 たとえばボクシングは拳で相手を殴る競技であって、パンチをよける競技ではない。柔道において受身は重要だが受身のうまさで試合に勝てるわけではない。柔道は相手を投げる武道なのだ。そんな桜庭の格闘技観が、QUINTETには込められている。

 引き分けがあるから“負けない闘い”もできなくはない。しかし「指導」でポイントを失わないため、チームに勝利をもたらすためには動き続ける必要がある。

 だから実績のある柔術家にとってもQUINTETは“チャレンジ”になる。選手がのめり込んでいるから、見ているほうは余計に楽しい。

「自分が抜かれても他のメンバーが抜いてくれる」

「周りが強い選手ばかりで不安なく闘えました。自分が抜かれても(他のメンバーが)抜いてくれるだろうっていう気持ちで、ガンガンいくことができました」

 そう語ったのはCARPE DIEMの石黒遥希。「後を託せる」ことがチームの強さでありQUINTETの面白さだったと選手たちは口を揃える。

 独自の試合形式は、それゆえにマッチメイクの幅も生む。女子巴戦に出場したTEAM CoroblockはMMAファイターで編成されていた。必ずしも“組み技師”ばかりではなかったが、だからこその緊張感もあった。

 今大会のワンマッチ(シングルマッチ)ではプロレスリングをベースとしてMMAで活躍する中村大介と、トップ柔術家の世羅智茂が対戦している。世羅が判定勝ちしたこの試合は、MMAの大会でも柔術の大会でも実現できない、QUINTETだからできた顔合わせだった。

【次ページ】 桜庭の息子〈SAKU Jr.〉が登場

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桜庭和志
TEAM CARPE DIEM
TEAM Fairtex
世羅智茂
中村大介

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