酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「9回打ち切り」電撃決定で「引き分け」が10%以上に!?…日本プロ野球の大問題、 そもそも試合時間が長すぎない?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/03/20 11:02
たいていの競技は2時間台で終わるものが多い中、NPBは2時間で試合中盤というケースも多い
影響を受けるだろう投手の“2つの成績”
(1)投手の勝利数が減る
当然の話ながら、勝敗がつく試合数が減るのだから、投手の勝利数は減少する。延長10回までだった2020年は試合数が120だったこともあり、パの最多勝は11勝(ソフトバンク石川、千賀、楽天・涌井)、セは14勝(巨人・菅野)だったが、143試合制に戻った今季も同じレベルの勝利数になりそうだ。
(2)クローザーのセーブ数も減る
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セーブは「勝ち試合」でなければつかない。同点で迎えた最終回にクローザーが0点で抑えても「完了」はつくがセーブはつかない。セーブ数は減少すると考えられる。
ただホールドは、中継ぎ投手がリードを保ったまま降板すれば、その後、同点に追いつかれて引き分けになってもつくので、ホールド数への影響はあまりないと考えられる。
延長戦がなくなることで、当然ながら投手のイニング数は減少する。また打者の打席数も多少減るだろう。
指揮官は同点、接戦の展開で終盤を迎えると、延長戦を考えて救援投手に準備をするように指示をしてきたが、9回で打ち切りとなれば救援投手の起用法が変わってくるだろう。
救援投手、特にセットアッパーは緊急登板も多く、負担の大きなポジションだったが、9回制になって多少緩和される可能性があるだろう。
2020年の平均時間はセ3時間10分、パ3時間16分
今回の9回打ち切りは、新型コロナ感染予防対策の一環であり「時短」が最大の目的だ。試合開始時間も午後5時45分にすることで、午後9時までに終わらせたいという意向がある。
しかし、2020年の平均試合時間はセが3時間13分、パが3時間18分。これは延長10回制での試合時間だが、9回に限ってもセは3時間10分、パは3時間16分、延長なしとなっても、それだけではほとんど短縮されない。
午後5時45分試合開始であっても、午後9時までに終了する試合は半分程度にとどまるはずだ。
2011年と2012年、両リーグは「延長12回、または3時間30分」というルールで行ったが、引き分け試合数はその前年まで2%前後だったのが、この2年間は7.5%まで増加している。つまり延長12回まで行かなくても3時間30分をオーバーする試合がそれだけ多かったということだ。
なぜもっと早く試合進行できないのか?
筆者は毎年プロ野球を数十試合観戦しているが、「なぜもっと早く試合進行できないのか」と思うことが多い。