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出し惜しみ続出…レッドブルにメルセデスなど有力F1チームが新車の情報統制を敷く理由とは
posted2021/03/12 06:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
今年のF1は、例年と開幕前の雰囲気が異なる。
通常であれば、3月の第2週は、すでにプレシーズンテストが終了し、開幕戦へ向けて最後の追い込みを行っている時期だ。ところが、今季のプレシーズンテストが始まるのは3月12日。そのテストで走らせる新車の発表も2月下旬から3月上旬にズレ込んだ。最後となったフェラーリの新車発表は3月10日だった。
遅れている最大の理由は、オーストラリアでの開幕戦が新型コロナの影響で延期され、2戦目に予定されていたバーレーンが結果的に開幕戦の地となったからだ。これに合わせて、F1マシンの機材などの輸送計画も大きく見直され、スペイン・バルセロナのカタルニア・サーキットで実施する予定だったプレシーズンテストも10日遅れでバーレーンで行うことになった。
F1マシンの開発にも及ぶ新型コロナの影響
もうひとつ、今年のF1が全体的に遅れ気味になっている理由がある。それは21年のマシンには開発に関して、制限が加えられているからだ。
本来であれば、F1は21年からレギュレーションを大幅に変更した新世代のマシンが登場するはずだった。ところが、新型コロナの影響で導入を1年延期。さらにコロナ禍でチーム財政が悪化していることを鑑み、"基本的"に20年型の車体を使い回すことになった。
そのため、F1に参戦して17年目のシーズンとなるレッドブルの21年の新車は「RB17」ではなく、昨年のマシン名「RB16」の改良版を意味する「RB16B」となっている。
ただし、昨年とまったく同じではない。例えば、前後のウイングやボディワークなどの空力パーツは開発可能であり、そのほかのパーツに関しても、国際自動車連盟(FIA)から許可されている2つのトークンを使うことで、凍結を解除することができる。
興味深いのは、トークンを使用するにあたって、FIAが定めている開発凍結パーツの箇所と時期が異なることだ。例えば、20年の開幕戦ではモノコックやギアボックス内部(トランスミッション構造)、フロア前部構造、後部インパクト構造などが凍結されていたのに対し、21年の開幕戦では、ギアボックスの外部(ケーシング)や前後のサスペンションアーム、ステアリングなどが凍結される。
つまり、今シーズンが3月26日に開幕する直前まで、トークンを使用せずに開発が可能となっている。これが各チームの新車がなかなか出揃わない、もうひとつの理由だ。