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出し惜しみ続出…レッドブルにメルセデスなど有力F1チームが新車の情報統制を敷く理由とは
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/03/12 06:00
昨年12月のテストではセバスチャン・ブエミが旧型RB16をテストしたレッドブル・ホンダ。今季のRB16Bは、この時点からの進化度合いに注目が集まる
それに加えて、今年はどのチームも新車を積極的に披露していない点も、例年とは異なる。これまでもライバルたちにコピーされないよう、新車発表会であまりディテールを明かしてこなかったという歴史はある。しかし、その新車をサーキットで初めて走らせるシェイクダウン走行の情報は少なくとも伝えてくれていた。
ところが、今年は2月23日に新車を発表したレッドブルが、その翌日にイギリス・シルバーストンで行ったシェイクダウン走行に関して公開した映像と写真はすべて、新車RB16Bと同時に持ち込まれて比較テストのために走行した2年前のマシン「RB15」のものだった。
トップ2チームによる徹底した情報統制
3月2日に新車を発表したメルセデスに至っては、シェイクダウン走行を行わずにプレシーズンテストに向かうという。なぜ、今年はここまで情報統制が厳しいのか。そこにも、レギュレーションによる開発凍結の影響が見え隠れする。
21年の開幕戦が幕を開ければ、すでにトークンを2つ使用していたチームは、それ以降は空力パーツ以外は変更することができないからだ。パーツの開発は箇所にもよるが、早くても数週間は要する。つまり、プレシーズンテストまで秘密にしておけば、ライバルチームにコピーされることはない。
メルセデスとレッドブルの情報統制が厳しいのは、映像や写真だけでなく、言葉による情報も制限していることだ。例えばマクラーレンや、今年ルノーからチーム名が変更されたアルピーヌ、そしてフェラーリはマシン後部に2つのトークンを使用したことをチーム幹部が明言しているのに対して、メルセデスとレッドブルはそれすらも明かしていない。
新車発表会は終了した。しかし、本当の新車を私たちが見ることになるのは、3月12日から始まるプレシーズンテストとなりそうだ。