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タティースJr.と14年契約。22歳とのビッグディールに踏み切ったパドレスに勝算はあるか 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2021/02/27 11:00

タティースJr.と14年契約。22歳とのビッグディールに踏み切ったパドレスに勝算はあるか<Number Web> photograph by Getty Images

ドミニカ共和国出身の右打者。2月22日の記者会見では「40歳まではプレーする」とも語った

 これはたしかに不安材料のひとつだ。野球史研究家のなかには、1970年代後半、当時としては異例の10年契約を結びながら大成することなく消えていった選手の例を持ち出す向きもある。

 具体的にいうと、ウェイン・ガーランドやリチー・ジスクのケースだ。

 50年生まれのガーランド投手は、76年のオリオールズで20勝をあげ、生まれたばかりのFA制度を利用して、インディアンスと10年総額230万ドルの契約を結んだ。史上初の10年契約と騒がれたのだが、その後の彼は不振だった。77年から81年までの5年間で99試合にしか登板できず、28勝48敗、防御率4.50の成績に終わっているのだ(引退後も年俸は支払われつづけた)。

 ジスク外野手(49年生まれ)も、いまひとつ伸びなかった。77年、ホワイトソックスで2割9分、30本塁打の活躍を見せた彼は、やはりFA制度を利用してレンジャーズと10年総額275万ドルの契約を結んだ。だが3年後、レンジャーズは彼をマリナーズにトレードした。現役最後のシーズンは83年。6年間の通算成績は2割7分7厘、108本塁打。悪くはないが、やや期待外れの結果に終わっている。年俸は87年まで払われつづけた。

超大型契約に根拠あり

 こういう例を引いてパドレスの決断を早すぎると見る向きもあるようだが、これはタティースの潜在能力に対する過小評価だろう。華やかなスター性や鼻っ柱の強さばかりが報道されるが、タティースは典型的な5ツール・プレイヤーだ。走攻守の三拍子に加えて、長打力や肩の強さが傑出している。

 2年間通算のスタッツを見ても、打率3割1厘、出塁率3割7分4厘、長打率5割8分2厘、本塁打39本、打点98、盗塁27という数字が並んでいる。難点は三振数(171)のやや多いことだが、これはフルスウィングする打者の宿命だろう。時代の趨勢なのか、スタントンやハーパーも驚くような三振数を記録している。例外はトラウトで、20代初めは三振が非常に多かったのだが、この弱点を徐々に修正していった。タティースは、どちらの道を歩むのだろうか。

 逆の角度から注目したいのは、パドレス側の姿勢だ。マチャドに対する未払い額とタティースへの支払い額を合わせると、合計は5億7000万ドルを超える。大盤振舞いといえばそれまでだが、長期的なチーム強化プランがなければ、この数字は出てこない。

 近い将来、ディネルソン・ラメットやマイク・クレヴィンジャーが投手陣の柱となり(ダルビッシュ有やブレイク・スネルも、まだまだ衰えないはずだ)、タティースがかつてのトニー・グウィン(ヤンキースでいえばデレク・ジーター)のような位置を占めれば、パドレスは相当に強力なチームになりうる。ギャンブルの要素がないとはいわないが、今後のパドレスが期待を抱かせてくれることはまちがいないようだ。

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