スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
タティースJr.と14年契約。22歳とのビッグディールに踏み切ったパドレスに勝算はあるか
posted2021/02/27 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
巨大な金額にはもはや驚かされないが、驚かされたのは期間の長さだ。
パドレスが、フェルナンド・タティースJr.との契約を延長した。新たに結ばれたのは2021年から34年までの14年契約で、総額が3億4000万ドル。総額でいうと、マイク・トラウト(エンジェルス)の12年総額4億2600万ドルや、ムーキー・ベッツ(ドジャース)の12年総額3億6500万ドル(12年)には及ばないが、延長された契約の総額としては史上3位だ。
しかも、期間が史上最長である。
これまでの最長記録は、ジャンカルロ・スタントン(当時マーリンズ。18年からはヤンキースに移籍)が2014年11月に結んだ13年総額3億2500万ドルという契約(2015~27年)だった。FAまで含めると、ブライス・ハーパーもフィリーズと13年総額3億3000万ドルという契約を結んでいる。
あとは、最初に触れたトラウトとベッツぐらいで、かつては10年を超える長期大型契約はさほど眼にしなかった。1980年、FAのデイヴ・ウィンフィールドがヤンキースと10年契約を結んだときは話題をさらったが、それでも総額は2330万ドルだった。
契約総額が3億ドルを超えた野手は、いま挙げた選手以外では、マニー・マチャド(パドレス)しか見当たらない(投手ではゲリット・コールがいる。ヤンキースとの契約は9年総額3億2400万ドル)。マチャドは、19年から28年までの10年総額が3億ドルちょうど。あのアレックス・ロドリゲスが07年にヤンキースと契約を延長した際の条件は、10年総額2億7500万ドルだった。アルバート・プーホルス(エンジェルス。12~21年)やミゲル・カブレラ(タイガース。14~15年+16~23年)といった大打者でさえ、実質10年契約の総額は3億ドルを超えない。これは、契約当時の年俸相場や貨幣価値のせいもあるのだが。
プレー期間わずか2年の大型契約に不安はないか
もうひとつ注目すべきは、タティースの若さである。1999年1月生まれだから、彼は22歳になったばかりだ。通常、長期の契約更新が提示されるのは、25~27歳の間が多い。トラウトやスタントンがそうだし、2001年のAロッド(当時レンジャーズ。契約は10年総額2億5200万ドル。当時は世界中が仰天した。21世紀の大型契約はここからはじまったといえる)もそうだった。いわでものことだが、大体は38~40歳という年齢を終着駅に設定している。
それにひきかえ、タティースは14年経ってもまだ36歳だ。先のことなどわからないとはいえ、大過なく現役生活を送れば、まだまだ第一線で活躍できる年齢だろう。
むしろ問題は、19年にデビューして以来、2年間で143試合にしか出場していないというキャリアの浅さではないか。