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日本陸連「体重・身長非公開」でスポーツ観戦はどう変わる? 摂食障害、無月経…“数値”の弊害と役割とは 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byAsami Enomoto

posted2021/02/23 17:03

日本陸連「体重・身長非公開」でスポーツ観戦はどう変わる? 摂食障害、無月経…“数値”の弊害と役割とは<Number Web> photograph by Asami Enomoto

男子走高跳日本記録保持者の戸邉直人は長身で無駄のない身体つきで知られている

プロフィールの身長・体重はあくまで「公称」

 大人になれば身長はほとんど伸びないが、体重は日々変動しているものだ。だが取材をしていると、真面目な選手ほど正確な数値を答えようとする。

 高校、大学、実業団で活躍したある男子長距離選手の身長は169cmだったが、大学時代のプロフィールでは少しサバ読んで171cmとしていた。それが実業団に入ったタイミングで174cmとさらに上げたのを知ったときは正直笑ってしまった。そんな選手もいるくらいなので、プロフィールの身長・体重は「公称」であり、「実際の数値」ではない可能性があることを知っておいた方がいいだろう。

数字のリアリティーがスポーツをより面白くした

 とはいえ数字がスポーツの楽しさを倍増することはある。大きい選手はそれだけで迫力があるし、逆に小柄な選手が大柄な選手を打ち負かす姿に勇気づけられることもある。サッカー界のスーパースターだったディエゴ・マラドーナは小柄(身長は公称165cm)だったからこそ、より多くのファンが熱狂した側面はあるだろう。

 陸上競技でいえば、走り高跳びは身長が高い方が圧倒的に有利だ。身長が高いのはそれだけで才能といえる。一方で、身長が低くても高く跳ぶことができる選手は、記録や順位とは関係なくジャンパーとしての魅力になる。その場合、身長が数値で分かっている方がファンは注目したくなる。

 身長・体重の数字には選手の才能や努力、それからストーリーが詰まっている。これらが公開されなくなると、スポーツの面白味の一部は失われてしまうのかもしれない。

 もちろん知られたくないのであれば公開する必要はないが、個人的にはできればこれからも多くのアスリートに身長・体重を公開してもらいたいと思っている。アスリートの身長・体重をはじめとする数値情報は、選手の魅力アップにつながるだけでなく、憧れの選手を目指すアスリートの参考にもなる。また、知ってほしい個人情報(トレーニングの数値など)をどんどん公開する空気になればスポーツ界はもっとポジティブでエキサイティングなものになるだろう。

 そして情報を受け取る我々は、身長や体重の数値だけに注目するのではなく、どんなパフォーマンスのためにどれだけの筋肉をつけ、脂肪を落としたのかというようなカラダの“中身”の重要性を理解することが大切ではないだろうか。

 

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