フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「時間と空間をコントロールするスタイル」不世出のゲームメーカー・シャビがこだわる“サッカーの鍵”とは
text by
ジェレミー・ドクトゥール&アントワーヌ・ブーロンJeremy Docteur et Antoine Bourlon
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/02/21 06:01
スペイン代表では133試合に出場して得点は13。意外な少なさがシャビのプレー特性を物語る
シャビ そこに関しては、すでにダニエウ・アウベスがサイドから攻め上がって数的優位を作り出していた。プレースタイルの違いはさておきアレクサンダー・アーノルドもそうした選手のひとりだ。マルセロもまたレアル・マドリーで、同様のプレーを十数年間続けた。セルヒオ・ブスケッツとアンドレス・イニエスタもその点では同じだった。レオ・メッシはピッチのあらゆる場所でそれを実践した。
危険がどこで生じるかは誰にもわからない。最善を尽くして違いをどう作り出すかを考えて、チームメイトとともに適応を試みる。相手を支配するやり方には微妙なニュアンスの違いがあることを念頭に置く。それは数的優位であったり、ポジションがもたらす優位であったり、あるいは直接対峙する相手との質の違いによる優位であったりだ。
監督は常に革新を試みるべき
――サッカーではすべてがすでに試みられた。革新とはかつて行なわれたことの再解釈に過ぎないという考え方も根強いです。
シャビ 進化は留まるところを知らず、常に新しいアイディアが生まれている。起点のパスについては、まだまだやるべきことがある。ハイプレスも同様だ。攻撃の起点ということなら、ポイントは明確だ。センターバックやサイドバックがピッチの中央にまで進出して異なるゾーンで数的優位を作り出せばいい。監督は常にシステムについて考えて革新を試みるべきで、周囲で何が起こっているかに気を配らねばならない。それこそが実践すべきプロセスだ。サッカーはプレーすることでしか成り立たないのだから。
――あなたはアル・サッド(カタール)で現役引退した後、同クラブの監督に直ちに就任しました。現役時代に実践していたことを、監督として再現しようとしているのですか?
シャビ 僕にとって重要なのは、選手たちが何のためにプレーするかを明確に理解することだ。たしかに僕は、中盤にはテクニックに優れた選手を置きたいと思う。互いに補完関係にあり、優れたビジョンを持ってウイングと連携しながらアタッキングサードで高い能力を発揮できる選手たちだ。頻繁に採用しているのは4・3・3システムだ。チームにはサンティ・カソルラやギジェルメ・トレスといった素晴らしい選手がいるし、カタール人選手たちのレベルも高い。彼らとともに現役時代から抱いてきたアイディアを、ピッチ上で進化させることができるのは大きな喜びだ。
――何か不都合なことはありますか?
シャビ 今日ではしばしば、すべてが監督の意志に依存する。結果にこだわりすぎている傾向がある。そしてそれは観衆が求めていることとは必ずしも一致しない。彼らのためにプレーしながら、試合がスペクタクルにまったく欠けたものになってしまう。そこをよく考えるべきだ。彼らが求めているのは得点でありゴール前の攻防であり、その際に生じる魅力的なプレーの数々だ。だが、現実には、結果にこだわりすぎるあまり、自分たちが観衆に何を提供できるかを考えようとしない。それが問題だと僕は思う。
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