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瀬戸大也はなぜ「引退を考えなかった」か? 活動停止期間がもたらした“スタミナ低下”と五輪への収穫とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2021/02/09 11:00
復帰戦となったジャパンオープン男子400m個人メドレーを制した瀬戸大也。五輪へ調子を上げられるか
今までとは違った緊張感があった復帰初戦
いちばんは、400m個人メドレーで優勝したことだ。もともと予定されていたスケジュールから大きく変わり、空白となった期間がある。紆余曲折を経て迎えた復帰初戦だ。
「久しぶりのレース、復帰戦ということで、今までとは違った緊張感がありました」
「(予選は)久しぶりだったので、かなり緊張していて周りが見えてなかったです。とにかく自分のことでせいいっぱいだった」
不安やさまざまな緊張のある中で勝ち切ったことは、瀬戸自身にとって手ごたえとなったはずだ。
泳いでいるときのフォームなどの面で以前と大きく変わった印象も見受けられなかった。瀬戸自身はこう語っている。
「技術的にはかなりのスピードで戻っています」
それをたしかめられたのも、収穫の1つだ。
反省とともに「泳ぎで感謝を」
そして何よりも、レースという場に立ったこと自体から得たものは大きかった。
久しぶりの実戦について尋ねられ、答える中に、このような言葉があった。
「初めてオリンピックの会場で泳がせていただいて、いろんな気持ちが芽生えて競技ができるありがたさを感じました」
また、コロナ禍に触れたあとにこう語っている。
「とにかく今は大会ができて出場できるありがたさをすごく感じました」
自身が立っている場所に、立ち位置に自覚がなかったことから、泳ぎたくても大会に出ることができない状況を自ら招いた。
だからこれまでを反省する。
「恵まれた環境というのが、自分はすごく当たり前だと勘違いしていたと、すごく情けない気持ちでいっぱいでした」
反省とともに、支えてくれた人々にも思いを馳せることから、「泳ぎで感謝を」とも考える。