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「ホークスが万年Bクラスだった時代を知る男」49歳小久保裕紀・新ヘッドに一番“尻を叩かれそうな”若手は…
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph bySankei Shimbun
posted2021/01/28 17:02
ダイエーホークス時代の小久保裕紀(98年の契約更改)。93年ドラフト2位でホークス入り
「自分に降りかかってくることは、すべて人生にとって必要であり、ベストなタイミングで訪れると思って生きてきた。周りの人からは棒に振ったとか、遠回りをしたと言われることもあります。それに対して反論はしません。ただ、僕の腹の中では“棒に振る″人生なんて存在しないんです」
そのうえで出会った座右の銘。それが「一瞬に生きる」だった。
2002年に内観という修行を経て、出合った言葉だ。内観とは畳半畳のスペースに1日15時間、1週間にわたって座り続ける。自分自身を振り返り、親や身近な人に〈してもらったこと〉〈して返したこと〉〈迷惑をかけたこと〉をひたすら思い巡らす。
「10年前にその言葉と出合い、人生とは無駄のない一瞬の積み重ねだと考えるようになった」のだと現役当時に振り返っていた。
「野手は任せた」“小久保効果”が一番期待できるのは……
今のホークスには、まだ小久保の現役時代を知る選手が主力級に残っている。
松田宣浩は「チームにとって当然プラス」だと言い切る。
「自分がプロに入って、あれだけ練習しないといけないんだと感じさせられた。本当にすごかった。野手の練習量が多くなるという記事は見ています。近年のホークスは自主性に任せてもらっているところがあった。もちろん個人練習はどのチームよりもやるけど、全体練習はもっとあっていいかなとも思っていた。練習はやって損はない。やったもん勝ちですから」
春季キャンプ初日の2月1日、小久保新ヘッドの動向は大いに注目されるだろう。複数の新聞報道によれば、工藤公康監督から「野手は任せた」と言われているらしく、1月23日付の日刊スポーツの配信記事には<工藤監督「経験を」小久保ヘッドに野手“全権委任”>との見出しが打たれた。
個人的に楽しみなのは、小久保もかつて守った「ホークスの三塁手」争いだ。松田の復活はもちろん、首脳陣は昨年日本シリーズMVPに輝いた栗原陵矢に三塁挑戦させる意向を示している。そして、昨年のウエスタン・リーグの本塁打王と打点王に輝いたリチャードという未来の中軸候補がいる。
特にリチャードにどのようなアプローチをするのか、非常に楽しみにしている。沖縄生まれのリチャードはのんびり屋。藤本博史二軍監督も「飛距離は柳田に匹敵するものがある。あとは自覚」とずっと言っているし、自主トレを一緒に行う西武の山川穂高からもしばしば叱られるのだそうだ。
小久保ヘッド就任で常に尻を叩かれる状況となったのは間違いない。ホークスの中で最も“小久保効果”が期待できるのはリチャードではないかと睨んでいる。