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楽天・パ上位戦力も夏場に失速の“悪癖”… 対策は石井一久監督必殺の大胆トレードでは【記録で振り返り】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/01/14 17:00
楽天の指導陣とコミュニケーションをとる石井一久監督。夏場以降に停滞しがちな楽天を変えるような采配、人事を見せられるか
オリックスから移籍したロメロは24本塁打、ロッテから移籍した鈴木も三塁を守って打率5位、リーグ2位の27二塁打を記録している。茂木から遊撃の正位置を奪った新人の小深田も打撃だけならベストナイン遊撃手に選ばれた西武の源田壮亮を上回る活躍だった。
ロメロのオリックス復帰は痛手
なお2021年はロメロがオリックスに復帰する。これは大きな痛手だ。
新外国人のブランドン・ディクソンは2019年にMLBで136三振を喫した粗っぽい右打者。ただし右左の違いはあるが、西武のスパンジェンバーグのような記録を残す可能性があるだろう。そして楽天は20代の若手野手が育っており、競争が激しいのは今後に向けて楽しみなポイントだろう。
中盤以降の落ち込みは、9月以降に先発投手陣が不振に陥り、打線も湿りがちになったことが大きい。そして9月以降、ソフトバンクに3勝9敗と大きく負け越したことが堪えた。投打のかみ合わせが良くなかったのだ。
2020年就任したばかりの三木肇監督の責任が追及されたのはやむを得ない部分もあるが、戦力的には今季も、ソフトバンクの対抗馬なのは間違いないだろう。
MLBのような積極補強、石井GMの手腕
昨年の陣容を見てもわかるように、石井一久GMは、ストーブリーグで積極的に動いて、投打の主力選手を獲得してきた。先発の涌井秀章、救援の牧田和久、野手では浅村栄斗、ロメロ、鈴木大地。これらの選手はすべて石井GMになってから獲得した選手だ。
オフには、ほとんど動かないNPB球団も多い中で、MLB球団をほうふつとさせる石井GMの手腕は、高く評価されるべきだろう。
昨年はシーズン中にウィーラー、高梨雄平と主力級の選手を巨人にトレードして若手選手を獲得した。
ウィーラー、高梨ともに巨人で活躍したことから石井GMの判断を批判する向きもあるようだが、2020年の楽天は鈴木大地を獲得した時点で、ウィーラーにはポジションがなかった。また牧田和久を獲得したことで、セットアッパー陣も充実していた。
ポジションが重なる選手がでたときに、躊躇なくトレードに出すのはMLBでは普通にみられるが、まっとうな判断だと思う。
NPBでは「一体野球は何人でするスポーツなのか?」と言いたくなるほどポジションが重なる選手を抱え込む球団も散見されるが、有力な選手をベンチウォーマーにするのは、あまり良いこととは思えない。