ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
プロ野球を取り巻く報道のカタチ…広報が感じた記事の「ファストフード化」
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2020/12/31 17:00
2年連続でBクラスに甘んじた北海道日本ハムファイターズ。オフは厳しい論調が相次いだ
記事が生み出された背景
これまで圧倒的スタンダードだったメディア、すなわち歴史のある新聞社や出版社で、そこに属する記者やライターが記事を発表するには、一定の内規が存在している。原稿にはデスク、編集者のチェックが入る。トーンを調整されるケースもある。記事化する際はニュースソースを匿名にしたとしても、社内では取材内容、事実確認を入念に行う。整合性が取れた掲載に値する記事として、人の目に触れるのである。
また筆者を匿名とした記事である場合にも、その社が責任を負うことになる。例えば「誤報」が記されている時には、球団として問い合わせや抗議も可能である。コミュニケーションを容易に取れる関係性があり、取材者と取材対象として、一定の関係が構築されているのだ。
ただ対面したことがない「フリーライター」や「スポーツライター」や、接点がない「ネット媒体」は、これまでの関わりがあったメディアとは異質である。
労を惜しまずに時間をかけて徹底的に取材をし、洗練された価値観と感性から生み出される記事。デスクと編集者がチェックをし、それを紙面に掲載し、近年はネットを通じて発信することもある。それを職人が手をかけ、数々の試食、試作などでクロスチェックをした逸品の料理に喩える。
その対極にある記事が、ライターの知人が表現した「ファストフード」にあたるのだと考える。料理に喩えるのであれば、それが同じテーブル、すなわちインターネット上で供される。同じ文章でも、生み出された背景が異なっている可能性があることも理解して、事実や文脈を咀嚼してほしいと切に願う。
読み解く方にも「責任」を
好みは人それぞれである。また価値観も違うので、氾濫するネット記事、論調についてすべてを否定はしない。コラムの場合もあるので「フェイクニュース」とまでは断じないが、残念ながら近いと言わざるを得ない記事もある。大概は、激しい内容である。
接点のない球団、特定の人物に対し、取材者や発信者として実体も見せずに標的にする。これまでにも同様のことは間々あったが、目に余る記事が明らかに激増した。ファイターズだけではなく、他球団関連でも酷似した報道がある。ネットユーザーに「確報」としてすり込まれ、時に苛烈なコメントを助長したりもするのである。
2020年は新様式のライフスタイルが生まれて定着し、人々の生活へとなじんだ。プロ野球を取り巻く報道のカタチも変化し、新たな潮流がある。混沌としている。
そんな年の暮れ、広報として強く思う。
私の視点で「無責任」と感じる報道や記事に対して、受け止め方は千差万別だろう。ただ読み解く側にも「責任」が求められる。