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「ふ、ふざけるな!」ネリの“裏切り”に温厚な山中慎介が腰を浮かし…井上尚弥と東京ドーム決戦「なぜ悪童ネリはここまで嫌われたのか?」《井上尚弥BEST》
posted2024/05/05 11:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
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スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が5月6日、東京ドームで元2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)と防衛戦を行うことが発表された。ネリといえばかつてWBCバンタム級王者だった山中慎介と2度対戦し、最初の試合でドーピング違反が発覚、再戦では計量に失格し、日本ボクシングコミッション(JBC)から無期限の資格停止処分を受けた“いわく付き”の選手だ。結果、ネリは日本のファンから憎悪の対象となった。なぜネリはここまで嫌われたのか。あらためてその経緯を振り返ってみたい。
会見の冒頭に「謝罪の言葉」を述べたネリ
3月6日、ネリは東京ドームホテルで開かれた記者会見に井上とともに出席した。冒頭、少し緊張した面持ちのネリは、事前に用意したであろうセリフを口にした。
「再び日本の地を踏むことができて大変うれしく思う。みなさんに申し訳なかったと謝りたい。JBC、ボクサー、帝拳プロモーションに謝罪を申し上げる。いま、私は大変集中してきちんと練習している。2度みなさんを裏切ってしまったが、節制をしてきちんと調整している。グレートな試合を見せたいと思う」
2度の裏切り。あれから6年が経過した――。
山中慎介が涙し、誰もが言葉を失った“京都の夜”
私たちがネリを初めて目撃したのは2017年8月15日、島津アリーナ京都で開催されたWBC世界バンタム級タイトルマッチだった。チャンピオンの山中慎介はこの試合が世界タイトル13度目の防衛戦。日本ボクシングの“レジェンド”具志堅用高が打ち立てた金字塔に王手をかけた試合だった。
このときネリはデビューから23連勝18KOの22歳。無敗を貫くサウスポーの強打者だが、世界王者クラスとの対戦経験はなく、決して挑戦者有利の予想が立っていたわけではない。しかし蓋を開けてみれば、若きメキシカンのラフなアタックに山中はのみ込まれ、結果は山中の4回2分29秒TKO負け。セコンドのタオル投入が早いという指摘もあったが、後の祭りだった。
「これだけ多くの方が応援してくれていたのに、期待に応えられず、喜ばせてあげられずに申し訳ない……」
試合後、涙を流してうなだれる山中の姿が痛々しかった。“神の左”とまで呼ばれた左ストレートで数々のノックアウト勝利を生み出してきたチャンピオンの王座陥落劇に、私たちはただ、ただ、言葉を失うしかなかった。