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移籍1年目の山根視来が見たフロンターレの異質さ 何連勝しても「反省が先」、指揮官が求める「1試合3点」 

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林遼平

林遼平Ryohei Hayashi

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photograph byJ.LEAGUE

posted2020/12/25 17:01

移籍1年目の山根視来が見たフロンターレの異質さ 何連勝しても「反省が先」、指揮官が求める「1試合3点」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

ベストイレブンに選出されるなど、移籍1年目から川崎にフィットした山根視来。充実した時間の中でも「満足していない」と語った

「あっ、これ普通じゃないのか」

 以前、鬼木達監督に今年を振り返ってもらった際、こんなことを言っていた。

「ふとした時にミキ(山根)に言われて、『あっ、これ普通じゃないのか』と気づかされたところがありましたね」

 その最たる例が、どれだけ連勝を重ねていてもチームがはしゃぐような喜び方をしなかったこと。仮に自分がその立場で、勝負事に何度も勝っていたとしたら、喜ぶのが当たり前である。

 だが、今季の川崎は何連勝しようが変に落ち着いている雰囲気があった。シーズン途中から薄気味悪いとすら思えるほど、勝敗に対して一喜一憂する姿が見られなかった。山根は振り返る。

「序盤ですかね。それを感じたのは。これまでは勝った時にガッツポーズしたり、会心の勝利に喜んでいたんですけど、勝った後にみんなが『ふう』みたいな感じなんです。それに何連勝しようが、先に反省が口に出てきたりして。あれは不思議な感覚でした。

 いい意味で満足しない。優勝を目標にしていて、なおかつ勝って当たり前だと思われているチームだと、ほっとする方が先に来るんだなと。それでいて、もっとこうできたんじゃないかと話し出す。この光景は新鮮でした。だからこそ、勝っても自分が何もしていなかったと感じる試合の時はあまり嬉しくなくて、モヤモヤするようになりました」

自分が何もしてなくても勝ってしまう

 決して“喜ばない”というわけではない。ただ、1つの勝利に対して喜ぶことよりも、次の試合に勝利するための方法に目を向けることを優先する。そんなチームに身を置くことで、山根の意識も少しずつ変わっていった。

 先ほどの言葉の中で「勝っても自分が何もしていなかったと感じる試合」というワードが出た。多少なりとも浮き沈みのある試合はあったとは思うが、外から見てそれはあまり感じられない。しかし、話を聞くと、チームが独走する中で多くの葛藤を抱えていたことがわかった。

「最初は勢いだけでできたところがありますけど、それからいろいろなものが見えてくるようになると、選択の判断に遅れ出すことが結構ありました。なかなかスムーズにいかなくて、効果的なプレーがあまりできていないなと。他の人に聞くと『そうか?』という反応をもらうこともあったんですけど、自分の中ではずっと問題意識がありました。

 これまでは正直、勝ったら自分の出来は二の次でチームが勝つことが大事でした。今はそれこそ競争があるので、ただ勝っただけではダメというか、出た時に活躍しないと自分は何もしていないという感じになってしまう。もはや、何もしなくても勝ってしまうことがあるんです。だから、守備の貢献度をみんなに言われますけど、自分は攻撃が好きだし、前で結果を出したいと思ってプレーしているので、そこができなければダメだという葛藤は長いこと感じていましたね」

 山根に言わせると、そういった思いを抱えていたのは自分だけではないらしい。これだけの強さを誇った川崎だが、その内実は全く慢心しない選手たちの集団。その事実に異質さを感じざるを得なかった。

【次ページ】 鬼木監督が課した「1試合3ゴール」

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