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伝説のクラッシュ・ギャルズと共通点が? “屈辱のクッキーづくり”が結んだSareeeと世志琥の奇妙な友情 

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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posted2020/12/25 11:02

伝説のクラッシュ・ギャルズと共通点が? “屈辱のクッキーづくり”が結んだSareeeと世志琥の奇妙な友情<Number Web> photograph by AFLO

2017年、Sareeeにスリーパーホールドを仕掛ける世志琥。この後、紆余曲折を経てオニカナが誕生する

「クッキー作り」を賭けるうちに奇妙な友情が

 試合では現代の日本の女子プロレスシーンの最高峰と呼べるハイレベルで激しい攻防を展開しながら、ベルトとともに「クッキー作り」が賭けられるという、シリアスとコミカルが同居する2人の抗争から、いつの間にか奇妙な友情のようなものが芽生え、10.22新木場1stRING大会から正式にタッグとしての活動を開始した。

 それまで罵り合い、感情をぶつけ合って闘っていた2人が、いざタッグを組んでみると、意外なほどに息がぴったり。あっという間にお互いが「最高のパートナー」として認め合うようになり、タッグ結成2戦目でビヨンド・ザ・シータッグ王座も奪取。Sareeeと世志琥という、日本の女子プロレス界を代表するシングルプレイヤーのライバル同士が、タッグを組むことで化学反応が起こり、さらに強い光を放つようになったのだ。

思い出すクラッシュ・ギャルズの誕生

「鬼に金棒」はコロナによるSareeeの渡米延期という不測の事態から偶然生まれたタッグながら、世志琥は「必然だったんじゃないかと思う」と語る。それは方法論こそ違っても、「日本の女子プロレスをもっとメジャーにしたい」という、目指す目標が一緒だったからだ。

 思えば、80年代を席巻した女子プロレス伝説のタッグチーム、クラッシュ・ギャルズも同じような動機から生まれたコンビだった。

 全日本女子プロレス(全女)の若手時代、ライオネス飛鳥と長与千種は同期でありながら、まったく別の道を歩んでいた。飛鳥は同世代のトップを走るエリートで、千種は周回遅れの雑草。それでも2人は、「旧態依然とした女子プロレスを変えたい」という共通の思いを抱いていた。

 そんな時、83年1月4日後楽園ホールで飛鳥と千種の一騎打ちが組まれる。同期から落ちこぼれ、引退を決意していた千種が試合前日、飛鳥を呼び出し「明日の試合で辞めるつもりだ。最後くらいは“決まりごと”なしに、自分の持っているものをすべて出す試合がしたい」と切り出すと、立場は違うものの同じく「自分の殻を破りたい」という思いを抱いていた飛鳥がそれに応えた。

「これで最後」と決めていた千種がすべてを吹っ切るかのように闘い、それを飛鳥が真正面から受け止めた試合は、これまでの女子プロレスにはない激闘となり、話題となった。そして2人がレスラーとして覚醒したのを全女首脳部は見逃さず、飛鳥と千種にタッグを組ませることを決める。こうして女子プロレスの革命コンビ、クラッシュ・ギャルズは誕生した。

【次ページ】 オニカナの試合は多幸感があふれている

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