ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
伝説のクラッシュ・ギャルズと共通点が? “屈辱のクッキーづくり”が結んだSareeeと世志琥の奇妙な友情
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2020/12/25 11:02
2017年、Sareeeにスリーパーホールドを仕掛ける世志琥。この後、紆余曲折を経てオニカナが誕生する
オニカナの試合は多幸感があふれている
もともと仲がいいわけではなく、性格的にも合わないはずの2人だったが、タッグを組み始めると「ここから何かが変わっていくかもしれない」という予感めいたものを感じていた。そして試合を重ねるごとにクラッシュは、旧態依然としていた全女の風景を変えていき、80年代半ば日本中に女子プロレスの大ブームを巻き起こしたのだ。
そんなクラッシュ・ギャルズとSareee&世志琥を同一線上で語るのは、まだ早いのかもしれない。しかし、今のオニカナの勢いと新鮮な輝きは、「ここから何かが変わっていくかもしれない」と思わせるに十分なものがある。
クラッシュが強くカッコいい飛鳥と、激情型でカリスマ性のある千種という違う個性の2人だったように、オニカナもアイドル的なルックスでありながらどこかぶっ飛んだところがあるSareeeと、強面ながらしっかり者で女子力が高い世志琥という、デコボコでありながら妙なバランスが取れているところもいい。
何より、いまのオニカナの試合は、Sareeeと世志琥自身が心からこのタッグを楽しんでいて、その多幸感が観客席にもしっかりと届いている。
オニカナの最大の魅力を生み出す“別れ”の気配
しかし、そんな楽しい日々が長く続かないこともふたりはよくわかっている。すでにWWE入団が決まっているSareeeは、状況次第でいつアメリカに行くことになってもおかしくない。今日のこの試合が、オニカナ最後のタッグになるかもしれないのだ。そんな現実があるだけに、2人の試合からは、楽しさや激しさとともに、どこかセンチメンタルなものすら感じられる。
そして、近い将来の“別れ”が決まっているからこそ、2人は「タッグを組んでいるあいだに伝説を作りたい」と口を揃える。いつ、それが“最後の試合”になっても悔いが残らないように、いまは全力で突っ走っている。
この今しか観ることのできない、いつ観られなくなるかもわからない刹那の輝きこそがオニカナの最大の魅力であり、その輝きが強ければ強いほど、のちに“伝説”と呼ばれるようになるのだろう。