ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
伝説のクラッシュ・ギャルズと共通点が? “屈辱のクッキーづくり”が結んだSareeeと世志琥の奇妙な友情
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2020/12/25 11:02
2017年、Sareeeにスリーパーホールドを仕掛ける世志琥。この後、紆余曲折を経てオニカナが誕生する
メンチを切ってスイーツを作り出す世志琥
Sareeeの渡米が延期になったあと、世志琥の運命もまた思わぬ方向に転がり出していた。3月末に東京都で外出自粛要請が出され、4月7日には政府が緊急事態宣言を発令。プロレスの興行は軒並み中止となり、国民に“ステイホーム”が強く呼びかけられる中、どんな形でもいいから情報発信していこうと、趣味のスイーツ作りを動画共有サイト「TikTok」で配信し始めた。強面の世志琥がカメラに向かってメンチを切りながら「どうも、女子プロレスラーの世志琥です。今日は、○○(スイーツの名前)を作ってやっかんな!」から始まる動画は、世志琥の見た目の怖さと、乙女チックなかわいいスイーツのギャップが話題となり、一気に拡散。
TikTokのフォロワーはわずか20日間で10万人を超え、現在は30万人以上。Twitterのフォロワーも13万人と激増。地上波テレビの人気バラエティ番組や情報番組にも数多く出演し、9月には『世志琥の極上スイーツ作りやがれ!』(ワニブックス)というレシピ本も発売。SNSがバズったことで、意外なかたちでのブレイクをはたしたのだ。
敗れると強いられる屈辱のクッキング
WWEに行くはずが浪人状態のSareeeと、SNSでバズり時の人となった世志琥。数カ月前とはガラリと立場が変わった両者が再び交わることとなったのは、8.26 SEAdLINNNG 新宿FACE大会だ。「5周年記念」と銘打たれたこの大会にSareeeが花束を持ってかけつけたが、世志琥が受け取りを拒否。これに怒ったSareeeが花束で殴りつけたことが開戦の合図となり、2人の抗争は再スタートした。
まず、9.14 SEAdLINNNG 新木場1stRING大会で組まれた7カ月ぶりのシングルマッチは、Sareeeの勝利。この試合前、Sareeeから「もし負けたら、私にクッキー作れよ」と挑発されていた世志琥は、試合の数日後、実際にSareeeのためにクッキーを焼く、屈辱のクッキングを強いられる。続いて9.24 新宿FACE大会で両者は、世志琥の持つビヨンド・ザ・シーシングルのベルトを賭けて再戦し、今度は世志琥がリベンジしてタイトル初防衛に成功。敗れたSareeeは、前回と逆の立場で世志琥にクッキーを焼いた。