ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
伝説のクラッシュ・ギャルズと共通点が? “屈辱のクッキーづくり”が結んだSareeeと世志琥の奇妙な友情
posted2020/12/25 11:02
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
AFLO
今年、プロレス界でコロナ禍の影響をいちばん受けたのは、良くも悪くもこの2人かもしれない。女子プロレスで、いま最も注目を集めているSareee(サリー)と世志琥(よしこ)のタッグチーム。その名も「鬼に金棒」、略して「オニカナ」だ。
Sareeeは今年、本来であれば新天地へチャレンジする飛躍の年になるはずだった。2月に世界最大のプロレス団体、アメリカWWEへの入団を正式発表。これはWWEのグローバル・タレント育成最高執行役員であるトリプルHによる直々のスカウトであり、ロウとスマックダウンの2大王座を制覇したアスカや現NXT王者の紫雷イオ、カイリ・セインに続き、その活躍が大いに期待されていた。
しかし、新型コロナウイルスの世界的パンデミックにより、春の祭典「レッスルマニア」開催前のタイミングで決まっていた渡米が無期限延期に。すでに日本で所属していたワールド女子プロレス・ディアナは退団しており、その立場は宙ぶらりんになってしまった。
その後も新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、このまま待っているだけでは何もならない。夏になるとSareeeはWWEの許可を得て、日本での活動を再開。「WWE COUNT DOWN」所属を名乗り、フリーの立場で各団体に参戦し始めた。その時、まず標的としたのが世志琥だった。
「渡米前にどうしても闘っておきたい相手」
Sareeeと世志琥は、ディアナとスターダムという団体こそ違えど、同じ2011年にデビューした同期。世志琥が15年2月に行われた安川惡斗との“不穏試合”の責任を取るかたちでスターダムを退団し、16年にSEAdLINNNGのリングで復帰した後は、Sareeeもちょうど同団体に約8カ月間所属していた時期でもありライバル関係を築いた。そして今年2月、Sareeeが「渡米前にどうしても闘っておきたい相手」として指名したのもまた、世志琥だったのだ。
Sareeeと世志琥は2.22 ディアナ新木場1stRING大会で対戦し、20分時間切れ引き分け。決着はSareeeがいつの日か日本マットに復帰し、2人がもっと大きな存在になってから――のはずだったが、新型コロナウイルスの世界的流行の影響で渡米は無期限延期。ここから2人のストーリーは予想外の展開を見せることとなる。