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女子レスリング、全日本で高校2年生が“世界女王”を破る快挙! アイドルフェイスの若きモンスター誕生
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySachiko Hotaka
posted2020/12/23 17:04
『レスリング全日本選手権』で快挙を成し遂げた高校2年生の藤波朱理
兄の棄権の影響も「いや、全く」
スポーツは世代による力の差があるといわれている。レスリングとて、その例外ではない。だからこそカデット(16~17歳)、ジュニア(18~20歳)、シニア(20歳~)ごとに大会が開かれている。世代間の力の差は感じなかったかと水を向けると、朱理はそんなことは全く気にしていないと言わんばかりに「自分は強い選手と組み合うのが好き」と笑顔とともに答えた。
「試合前からこんなにワクワクしたのは初めてだったかもしれない」
シニアを相手にしても、恐怖やプレッシャーとは無縁なのか。決戦前日には兄・勇飛が過度な減量が響いたのか試合を棄権せざるをえなくなった。そのことは自分の試合に影響したかと聞いても、朱理は表情ひとつ変えることなく「いや、全く」と首を横に振った。
「(兄妹といえど)自分は自分なので」
同じ世代の選手と比べても、完成度は高い
幼少時から朱理を指導している藤波監督は愛娘の成長に目を細める。
「動きそのものは兄と似ているけど、違いもある。一番の違いは集中力。兄の方はイケイケの時はいいけど、ここ一番で負けることも多かった。一方、妹の方はそういうところはなく、試合でも自分の力を出し切れる。同じ世代の選手と比べても、完成度は高いと思います」
藤波監督の高評価は“親馬鹿”には聞こえなかった。というのも、朱理は中2のときの全国大会で敗れて以来、一度も敗れていない。今回はシニアの壁をあっさりと破ってしまった。ちょうど1年前、シニアの強化合宿に参加させてもらった時にはすでに奥野に肉薄していたというのだから、この1年でさらに成長したのだろう。朱理も「1年前は、体力や筋力の面でその差をすごく感じていた」と明かす。「でも、1年経ってみたら、その差はあまり感じなかった」
藤波監督も、朱理の試合運びに成長を感じている。「今まではタックルに入ることはできるけど失点するパターンも多かった。今回そういうことを極力なくすために『深追いはするな』という指示を出していました」