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杉本昌隆八段&藤井聡太二冠の“今どきな師弟関係” 「斎藤佑樹がいた早実の甲子園優勝」との共通点って?
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byTakashi Shimizu
posted2020/12/18 11:03
笑顔で取材に応じる杉本昌隆八段と藤井聡太二冠。現代的な将棋の師弟関係の象徴的存在だ(写真は2019年のもの)
かつては内弟子制度を含めて、師匠の立場がはっきり上で、弟子に教えるという役割でした。それが今では全く違って、対等な関係……というと少し違うかもしれませんが、そのような関係性を象徴するのは、やはり杉本昌隆八段と藤井聡太二冠ではないでしょうか。
お互い敬意と信頼感があふれている
皆さんもテレビなどでよくご覧になっていると思いますが、杉本先生は日ごろから本当に弟子である藤井二冠に敬意を持って接しています。それこそ、杉本先生が師匠なのに藤井二冠に敬語を使うんじゃないか、というほどでして(笑)。冗談はともかく、藤井二冠の方も杉本先生にずっとお世話になってきたからこそ、師匠に対する信頼感があふれている。現代的な、そして凄く理想的な関係の師弟なのかなと。
この関係性は杉本八段と藤井二冠だけではありません。
身の回りのことを含めて、本当に愛する我が子のように、師匠が心配したりお世話してあげる――というのが現在の師弟関係です。研究会で一緒に将棋を指すときも、その戦型について弟子の方が詳しい場合、師匠が弟子から新手を学ぶことも普通のことになっていますから。
深浦九段と佐々木五段の関係性も独特
師匠に対して冗談などを言えるのも、今だからこそなのかもしれません。代表格は……深浦康市九段と佐々木大地五段です。『ABEMA』などの対局中継で佐々木五段が解説される際には師匠についてユーモアを交えて話していますし、深浦先生が深浦一門のツイッターを始める際には「大地がどうしても師匠と始めたい」と持ちかけたそうですし、師弟が並んでゲーム実況配信に挑んだりしたこともありました。
もちろん大切な節目において、深浦先生から佐々木五段に助言するなど、これまで将棋界が築いてきた師弟関係がベースにあるという前提の上で、こういった活動をしているのですが。
人と人との関係性の変化で思い出すのは、スポーツの話になるのですが――私の母校・早稲田実業での出来事です。