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杉本昌隆八段&藤井聡太二冠の“今どきな師弟関係” 「斎藤佑樹がいた早実の甲子園優勝」との共通点って?
posted2020/12/18 11:03
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by
Takashi Shimizu
12月18日は私の師匠である、米長邦雄永世棋聖の命日です。2012年にこの世を去って、もう8年が経ちましたか……。今回は師匠である米長先生との思い出とともに、将棋における師匠と弟子の関係性についてお話ししたいと思います。
棋士を目指すにあたって、養成機関である奨励会に入るタイミングでそれぞれがプロ棋士のもとに入門する。つまり師弟関係が生まれます。将棋は勝敗を争うゲームであると同時に、伝統文化としての側面もあります。将棋界を今後も発展させていく上では、師弟関係となることで、お互いに1人の棋士としての責任感が生まれる面があります。そういった心構えを意識するために必要なものなのではないかと感じています。
内弟子制度があった先崎九段に聞いた話
以前はいわゆる住み込みで共同生活する“内弟子制度”がありました。皆さんが想像される通り、朝は部屋の雑巾がけから始まって、買い出しに行ったりトイレ掃除など身の回りのお世話をして、お稽古に行くときはカバン持ちでついていって師匠の立ち振る舞いを見て、夜になったら自分の将棋を勉強して……という日々だったそうです。
その内弟子制度ですが、現在はまったく聞くことはありません。それは同じ伝統文化の落語や講談なども同じなのかもしれませんね。
実際、米長一門は現在私を含めて7人いるのですが、世代によって師匠と築いた関係性は異なります。例えば兄弟子の先崎学九段は内弟子も経験されていて、“同じ門下なんだけど、過ごしてきた環境というか、師匠とのかかわり方が全然違う”と言われたことがあります。
確かに私は月1回将棋を見てもらう際にお会いするという関係性でしたが、先崎九段のように住み込みの内弟子となると、親子以上に不思議で濃いつながりがあったそうです。私は経験しなかったとはいえ、弟子として多感な時期に長く時間を過ごしたと想像すると、理解できるような気がします。