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2024年パリ五輪、ブレイクダンスなど“若者向け”競技は増えたが…「枠削減」はなぜ起きた?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2020/12/13 06:00
実はブレイクダンス強豪国の日本。写真は11月28日にオーストリアで開催された世界大会で優勝したシゲキックスこと半井重幸(18)
テレビ放送に向いた形にルールが改正されてきた
そこにはテレビ視聴率の課題もある。巨大化したオリンピックを維持していくためには、アメリカを中心とした莫大な放送権料は欠かせない。そのためには視聴率を稼げるであろう期待が持てる競技や種目が優先される。
既存の競技もIOCによって、視聴率などでランク付けされ、テレビでの放送に向いた形にルールが改正されてきたのも同じ土台にある。
バレーボールがラリーポイント制になったのも、試合時間が読みにくく中継に向かないことからであったし、陸上短距離のフライング回数が制限されたのも同じだ。競技団体によっては、ルールの変更について、幹部が「ビジネスのためだ」とテレビインタビューで、きわめて率直に語ったこともある。
「見せる」という観点で俎上に載せられ、変化を求められる五輪競技たち。追加を望む新興競技たちはニーズに合わせてアピールする。
それぞれの競技の本質を損ないかねない危うさもそこにあるし、でもIOCの路線が変わりないことも、今回の決定は示している。
ウェイトリフティングとボクシングの出場枠が減った
話は戻る。コスト削減という点から言うと、全体の種目は10減り、選手数は2016年のリオデジャネイロ五輪の1万1238人から、パリでは1万500人以下に減らされることになった。
そこに寄与しているのが、ウェイトリフティングとボクシングだ。
ウェイトリフティングは男女それぞれ2階級が削減され、出場枠で言えば76の削減となった。リオの出場枠から見ると、半分以下になる。
またボクシングは出場枠が34、減ることとなった。
ボクシングの場合、国際競技団体がさまざまな不祥事で資格停止中にあることが要因として推測される。
そしてウェイトリフティングも国際連盟の前会長の汚職や権力闘争が問題となり、何よりもドーピングの多さが今回につながっている。今年6月のIOC理事会では40件のドーピング隠ぺいが問題視された。