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“水着姿のストレス”が認知症予防に!? 不眠、誤嚥、肥満にも効く「高齢者」の正しい泳ぎ方
text by
鳥集徹Toru Toridamari
photograph byGetty Images
posted2020/12/12 11:02
70、80代が泳ぐときには何に気を付けたらよいのか。中村格子医師に聞いた
水着姿を見られるストレスが認知症予防につながる?
──確かに、睡眠障害の専門家に話を聞くと「きょういく」と「きょうよう」と言って、「今日行くところ」と「今日の用事」があること、つまり日中に活動することが不眠症の改善には大切だと言います。
そうです。外で運動してほどよく疲れるだけでなく、出かけて着替えるとか、人に見られるといったことも、すごく大事なことだと思うんです。水着になるとボディを見られるじゃないですか、それは中高年の方、特に女性にとっては、かなりのストレスだと思います。でも、人目を意識するとかプライドというのはすごく大事で、恥ずかしいから体を引き締めようというモチベーションになるんです。
それに、プライドの高い人は認知症になりにくいのではないかと私は感じています。プライドというのは「高慢」という意味ではなく、「自分はこうありたい」という意識があるという意味です。理想の自分になろうという努力が、脳を活性化させて、認知機能の低下を防ぐことにつながると思うんです。
スポーツ施設の選び方、使い方
──高齢の方はプールでなにか起きたらと健康面が心配な方も多いと思うのですが、久しぶりにプールを利用する際には、その前に医師のチェックを受けるとか、医師がいるスポーツ施設を利用すると言ったことが大切でしょうか。
ふだんから健康であれば、とくに必要ないと思います。今まで健康診断で何もひっかかったことがない人はあらためて調べることはないでしょう。ただ、ちょっと負荷の強い運動をすると胸が苦しくなる、息切れがする、関節などに痛みが出る、階段を2階まで上がれない、運動にともなって普段は感じないつらさが起こる。そういった人は、なんらかの疾患が隠れている可能性がありますので、医療機関で診察や検査を受けてから、プールに入っていいかどうかを医師に判断してもらうべきでしょう。
──スポーツ施設を選ぶときには、インストラクターの下で行うのか、それとも自分だけで泳ぐのかという選択肢もあると思います。高齢者や初心者は、やはりインストラクターがいたほうがいいですか?
人それぞれですので、必ずしもインストラクターはつけなくていいと思いますが、施設の人とコミュニケーションをとって、何かのときは助けてもらえるようにしたり、いい人間関係をつくっておくことは大切です。
あいさつもしないとか、だれとも口も利かない、どこのだれかもわからない状態で一人で行って、一人で帰っていくという感じだと、若いスタッフの人だと介入がしづらくなるから、あいさつをして人間関係を築いておいたほうがいいですよね。それに、「ちょっと教えて」と言えるような間柄のほうが居心地がよくて、安心です。大都市でも高齢者の孤立化はすごく問題になっているので、孤立させないことはコミュニティ全体で考えるべきことだと思うんです。