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“水着姿のストレス”が認知症予防に!? 不眠、誤嚥、肥満にも効く「高齢者」の正しい泳ぎ方

posted2020/12/12 11:02

 
“水着姿のストレス”が認知症予防に!? 不眠、誤嚥、肥満にも効く「高齢者」の正しい泳ぎ方<Number Web> photograph by Getty Images

70、80代が泳ぐときには何に気を付けたらよいのか。中村格子医師に聞いた

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鳥集徹

鳥集徹Toru Toridamari

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プールでの運動は浮力が得られるので、歩くだけでも大きな効果を得ることができる。転倒・骨折のリスクもないので、下半身の筋力が弱っている高齢者にもおすすめのスポーツだ。高齢者が安全にプール運動を楽しむためには、どんなことに注意すればいいだろう。スポーツ整形が専門でスイミングにも詳しいDr.KAKUKOスポーツクリニック院長の中村格子医師にお話をうかがった(全3回の3回目/#1#2へ)。

──若い人たちに比べると、高齢者の水泳はより体に負担がかかると思うんですが、60代、70代になって筋力が衰えてきた人もプールで泳いで大丈夫でしょうか。

 全然やっていいと思いますよ。ただのバタ足でもいいし、水中で歩くだけでも、十分体にいいと思います。無理のない範囲でやっていただければ。

──歩くだけでもいいということですが、具体的にはどんな歩き方をするといいでしょう。

 大股で歩いてください。大きく手を振ることや大きく足を上げることを意識していただくと、ひざや股関節、肩の可動域が広がります。

──ただ、歩くだけだと水泳で上半身の筋肉を鍛えるという目的が達成できないような気もしますが。

 そんなことはないんです。水中で手を振らないで歩ける人はいないはずです。水中で歩くときには、大きく手を振って、絶対に水をかく。あれがいいんです。それから、水中だと転倒の危険がありません。プールサイドはすべりやすいので、そこは気を付けていただきたいのですが、他のスポーツと違って、転倒・骨折のリスクがないのが、水泳のいいところです。

「やせてください」「痛くて歩けません」に水泳

──高齢の人だと、ひざや股関節の悪い人も多いですよね。

 ひざや股関節が痛くなる人は、太り過ぎの方が多いんですが、「やせてください」と言っても「痛いから歩けなくて、運動ができません」と言われることが多いんです。でも、胸まで水に浸かっていれば浮力が働いて、脚のところでは7割ほど体重が軽くなっている。そのおかげで軟骨を損傷させることなく、関節まわりの筋肉を鍛えられます。

 また、浮力が働いて地上ではできない水中ならではの大きな動きができるので、関節の動く範囲を広げる可動域訓練にもつながる。大股で歩くとか、横歩きをするとか、後ろ歩きをするとか、それだけでもかなり大きな運動になります。

──水の中のほうが、関節の動きは大きくなるんですか?

 大きくなります。地上で歩く程度の歩幅だと水中では前に進めませんから、大きく足を前に出さざるを得ません。しかも、かなりの努力が必要となります。でも、浮力が働いているので、それが意外に楽しくできるんです。それに水の中は他の人からあまり見えませんから、大股でも恥ずかしくありませんよね。

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中村格子

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