Number Do ExBACK NUMBER

“水着姿のストレス”が認知症予防に!? 不眠、誤嚥、肥満にも効く「高齢者」の正しい泳ぎ方 

text by

鳥集徹

鳥集徹Toru Toridamari

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2020/12/12 11:02

“水着姿のストレス”が認知症予防に!? 不眠、誤嚥、肥満にも効く「高齢者」の正しい泳ぎ方<Number Web> photograph by Getty Images

70、80代が泳ぐときには何に気を付けたらよいのか。中村格子医師に聞いた

嚥下機能も高めることができる

──高齢の方だと嚥下機能が落ちている人も多いと思います。水を飲んで、むせてしまうということもあり得るかと思いますが。

 逆に、それを予防するためにも、水泳がおすすめなんです。嚥下機能が落ちるのは、咽頭部の筋力が落ちるからです。プールで泳いだり歩いたりすれば、呼吸を一生懸命するので、心肺機能と同時に嚥下機能も高まります。

 それから運動することで、脳の活動も活発になります。高齢になってむせやすくなる、飲み込みにくくなる、しゃがれた声になるといったことが起こるのは、のどの筋力が落ちて喉頭蓋(飲み込む時に気管を閉じるフタ)や声門がきちんと閉じなくなるだけでなく、脳の延髄、「球」という部分の機能低下も関係しているんです。水泳は筋力アップになるだけでなく、神経も刺激して活性化させるので、両方にいいと思います。

不眠を改善させるための効果的な泳ぎ方

──確かに、プールでのエクササイズは脳を活性化させるので、認知機能の改善に効果があるかもしれないという研究を取材したことがあります。それから、高齢者は睡眠障害になりやすく、不眠に悩まされる人も多いですよね。

 そうですね。水泳は睡眠の改善にもなりますよ。不眠になるのは、体内時計(サーカディアンリズム)が狂うからです。睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」を夜たくさん分泌させるためには、早朝から昼間に活動して「コルチゾール」というホルモンを上げることが重要です。

 それから、メラトニンをたくさん作るには、その原料となるアミノ酸の一種である「トリプトファン」を摂ることも大切です。トリプトファンは肉類やチーズ、納豆なんかにも多く含まれています。そうした食事を意識して摂ると同時に、食べ物が入ることで内臓が時間を認識しますから、食事の時間を一定にしてリズムをつくることも大切です。

 そもそも高齢者は、夜まで体力が続かないので、午前中しか動けない人が多いんです。通院も疲れてしまうので、患者さんは午後からは病院に来たくないと言います。ですから、水泳も必然的に午前中にする人が多いんです。そもそも、高齢者で夜プールで泳ぐ人はあまりいませんよね。定期的に同じ時間に日中の運動を入れることで、体も「今が活動期だ」と認識するんです。

【次ページ】 水着姿を見られるストレスが認知症予防につながる?

BACK 1 2 3 4 NEXT
#中村格子

水泳の前後の記事

ページトップ