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「首を切っていたかも…」F1バーレーンGP“車体真っ二つで大炎上” お手柄ヘイロー、求められる原因究明
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2020/12/04 17:02
グロージャンはまさに炎の中から生還。大波乱後のレースを制したのはハミルトンだった
グロージャンの命を救ったもの
今回、大事故からグロージャンが生還できた理由は、グロージャンを乗せたコクピットが事故の衝撃に耐え、ドライバーを守るために設計された空間というサバイバルセルの役割を果たしていたこと。厳しい安全基準によって製造されたヘルメットやドライビングスーツなどのレーシングギアが炎からグロージャンを守ったこと。さらにコースサイドに待機していたマーシャルとF1マシンを追走していたメディカル・カーに乗ったスタッフたちによる迅速な消火活動と勇敢な救出活動が行われたこと。そしてガードレールから頭部を守った頭部保護デバイスであるヘイローの存在があったことが挙げられる。
とくに今回の事故で、グロージャンのコクピットがガードレールにめり込んだ状態になっていたことを考えると、2018年から導入されたヘイローはF1の安全性向上に大きく貢献していたことは間違いない。
「ガードレールが彼の首を切っていたかも…」
7冠王者のルイス・ハミルトン(メルセデス)もヘイローをこう評価した。
「ヘイローが機能してくれたことにとても感謝している。(ヘイローがなかったら)ガードレールが彼の首を切っていたかもしれないから……」
それは大事故から生還したグロージャンが誰よりも痛感している。検査後、病院からこんな動画をアップしていた。
「僕を救助してくれたサーキットおよび病院の医療スタッフの方々に感謝している。そして何よりヘイローに感謝したい。ヘイローがなければ、いまこうして話をすることはできなかっただろう。僕は何年か前にヘイローの導入に反対していた。でも、いまは違う。ヘイローはF1に導入されたもののなかで最も素晴らしいデバイスだ」
だが、今回の事故をヘイローによる美談で終わらせてはいけない。なぜ炎上したのか。なぜガードレールがあのような壊れ方をしたのか。見直さなければならない点はいくつもある。
今回の事故は私たちにどんな警鐘を鳴らしたのか。この事故から私たちは何を学ばなければならないのか。モータースポーツは危険なスポーツである以上、安全対策に終わりはない。