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不屈の精神で“至上の記録”に並んだハミルトンのV7。~歩んだF1の道のりと涙の理由~
posted2020/12/03 07:00
text by
今宮雅子Masako Imamiya
photograph by
Getty Images
ゴールの後、パルクフェルメに停めたマシンのなかでルイス・ハミルトンは動けずにいた。レース終盤、必死で抑えていた幼い頃からの思い出が、ゴールの瞬間に心を直撃し、突然、涙が溢れ出た。
「僕は強いはずだ。人前で涙は見せないと決めていた。でも、たくさんの思い出には抗えなかった」
直後のインタビュー、子供たちに向けてエールを送ったのは、そんな心の流れがあったからかもしれない。
「夢を諦めないで。周りの人たちが“そんなの不可能だよ”と言っても、絶対に聞き入れちゃ駄目だ」
2011年以来のF1を迎えたイスタンブールパークは、第12戦ポルトガルGPをはるかに超える困難に満ちていた。急遽決まったグランプリ開催。サーキット側が良かれと思って行った新舗装は新しすぎて、表面にオイルが浮く。11月の気温は低くタイヤが作動温度に到達しないうえに、土曜~日曜は冷たい雨に見舞われた。ペースが遅いとタイヤが冷える。しかし少しアクセルを踏んだだけでスピンしてしまう……。