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セナ最期の地でハミルトンが噛み締めた特別な勝利 思い出すヒーローへの憧れと初めて見た父の涙
posted2020/11/08 17:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
20年のF1はコロナ禍の影響で当初予定されていた世界各地を転戦する日程が大きく変更され、ヨーロッパを中心に開催されている。
本来、10月30日から行われるはずだったメキシコGPは中止となり、今年はイタリアのイモラでエミリア・ロマーニャGPとして開催された。イモラでF1が開催されるのは14年ぶりのこと。当時、イタリア半島の中東部に位置する共和制国家サンマリノの名を冠して、春にサンマリノGPという名称で行われていた。
このサンマリノGPで今から26年前の94年に、痛ましい事故が起きた。その犠牲者となったのが、ローランド・ラッツェンバーガーとアイルトン・セナだった。
午後6時3分、脳死。午後6時40分、心肺停止
予選において高速コーナーのビルヌーブでクラッシュしたラッツェンバーガーはコクピットから降ろされた後、その場で医療チームによって心臓マッサージが施されたが、事故発生から57分後の午後2時15分に死亡した。
翌日のレースでは、セナが高速コーナーのタンブレロでコースアウト。コンクリートウォールに激突したセナは意識のないままボローニャにあるマッジョーレ病院へ搬送され、蘇生手術が施されたものの、「内臓の手術は成功したが、脳の損傷があまりにもひどかった」(担当した外科医のフランコ・バルドーニ医師)ため午後6時3分、脳死。その37分後の午後6時40分に心肺停止となり、死亡が確認された。
エミリア・ロマーニャGPの1週間前に行われたポルトガルGPでミハエル・シューマッハを抜き、F1史上最多となる92勝目を記録したルイス・ハミルトン(メルセデス)にとって、イモラで行われるエミリア・ロマーニャGPは特別なレースだったのだ。