沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER

伝説の毎日王冠、武豊がサイレンススズカに感じた「絶対的な強さ」…“現役最強vs無敗の3歳2頭”の興奮 

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

PROFILE

photograph byBungeishunju

posted2020/11/28 11:03

伝説の毎日王冠、武豊がサイレンススズカに感じた「絶対的な強さ」…“現役最強vs無敗の3歳2頭”の興奮<Number Web> photograph by Bungeishunju

98年、伝説の毎日王冠は武豊騎乗のサイレンススズカがその3強対決を制した

ラスト400m手前、武豊が後ろを振り返り…

 ラスト400m手前で武がちらっと後ろを振り返った。サイレンススズカが手応えに余裕のあるまま独走態勢に入る。グラスの外からエルコンドルパサーが伸びてくるが、サイレンススズカとの差はなかなか縮まらない。

 サイレンススズカが2着のエルコンドルパサーに2馬身半の差をつけて逃げ切った。1000m通過57秒7という、普通なら前が総崩れになるほどの超ハイペースで逃げながら、最後まで速い脚を使ってしまうのだから、後ろの馬はたまったものではない。

 この年の戦績を6戦6勝としたサイレンススズカはしかし、次走の天皇賞・秋でレース中に骨折、予後不良となり世を去った。

 それでも、周囲に他馬のいない、文字通りの異次元の世界を自分だけのペースで走り切って勝つという「絶対」の形があることを私たちに教えてくれた。

 エルコンドルパサーは、次走のジャパンカップを圧勝。翌年、フランスに長期遠征に出て、GIのサンクルー大賞を制し、凱旋門賞では「勝ちに等しい」とまで言われた2着となる。国内で敗れたのは、この毎日王冠だけであった。2002年に7歳の若さで死亡したため、種牡馬としては3世代しか産駒を残さなかったが、そのなかにはジャパンカップダートなどを勝ったヴァーミリアン、アロンダイト、菊花賞馬ソングオブウインドなどのGI馬がいる。

 グラスワンダーはこの毎日王冠では5着に終わったが、同年の有馬記念、翌年の宝塚記念、有馬記念とグランプリ3連覇を果たす。種牡馬となってからは、ジャパンカップを勝ったスクリーンヒーロー、宝塚記念を制したアーネストリー、朝日杯フューチュリティステークスを勝ったセイウンワンダーなどを送り出した。さらに、スクリーンヒーローが、種牡馬として2015年の年度代表馬モーリス、有馬記念を勝つゴールドアクターを送り出すなど、息の長い血の力を見せつけている。

超一流馬による真剣勝負はいつも

 98年の毎日王冠は前評判どおりの凄まじいレースとなり、後世にとって非常に意味のある一戦となった。88年秋のタマモクロス対オグリキャップの芦毛対決も、92年天皇賞・春のメジロマックイーン対トウカイテイオーの天下分け目の決戦もそうだったように、超一流馬による真剣勝負は、必ず私たちに何かを残してくれる。

 今年のジャパンカップはどんなレースとなり、私たちにどんなものを残してくれるのか。

 11月29日、決戦のファンファーレが鳴る。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

関連記事

BACK 1 2 3
武豊
サイレンススズカ
グラスワンダー
エルコンドルパサー

競馬の前後の記事

ページトップ