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伝説の毎日王冠、武豊がサイレンススズカに感じた「絶対的な強さ」…“現役最強vs無敗の3歳2頭”の興奮
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![島田明宏](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/d/c/-/img_dc43f384ba4fc9b5cf3d05b268d3384f15734.jpg)
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byBungeishunju
posted2020/11/28 11:03
![伝説の毎日王冠、武豊がサイレンススズカに感じた「絶対的な強さ」…“現役最強vs無敗の3歳2頭”の興奮<Number Web> photograph by Bungeishunju](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/b/9/700/img_b9267aab759fe0596c1f1c408cabc3c3168492.jpg)
98年、伝説の毎日王冠は武豊騎乗のサイレンススズカがその3強対決を制した
武豊はサイレンススズカに「絶対的な強さ」を感じていた
そして、単勝1.4倍の1番人気に支持されたのは、武豊が騎乗する4歳牡馬のサイレンススズカ(父サンデーサイレンス、栗東・橋田満厩舎)だった。普段はおとなしかったのだが、競馬場に行くとテンションが異常に高くなり、3歳春の弥生賞ではゲートの下に潜り込み再スタートでも大きく出遅れて8着に敗れるなど、非常に難しいところを見せていた。返し馬で走り出すと止めるのが大変だったりと鞍上を煩わせていたが、4歳になった98年、気難しさを爆発力に転ずることができるようになり、本格化する。
その年、バレンタインステークス、中山記念、小倉大賞典、金鯱賞、そして宝塚記念(南井克巳が騎乗)と、すべて逃げ切って5連勝。なかでも圧巻だったのは、5連勝中のミッドナイトベット、菊花賞馬マチカネフクキタルなどが出ていた金鯱賞だ。前半1000m通過が58秒1というハイペースで逃げ、2着に1秒8もの大差をつけて、1分57秒8のレコードを叩き出した。レース後武は「今日の内容ならどんな馬が出てきても負けないんじゃないか」とコメントした。翌週、その「どんな馬」が全盛期のナリタブライアンやトウカイテイオーだったとしても負けなかったかと訊くと「と、思いますよ」と即答した。普通、騎手というのはそうしたタラレバの質問には答えたがらないものだが、それだけ武は、サイレンススズカに「絶対的な強さ」を感じていたのだろう。
GIIレースに13万3461人もの観客が
前置きが長くなったが、98年の毎日王冠でグラスワンダーは、骨折のため朝日杯以来約10カ月ぶり、エルコンドルパサーはNHKマイルカップ以来約5カ月ぶり、サイレンススズカは宝塚記念以来約3カ月ぶりと、3頭とも休み明けだった。当時の別定ルールにより、負担重量は、それぞれ55kg、57kg、59kg。
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舞台となった東京競馬場には、GIIとは思えない13万3461人もの観客が詰めかけた。
ゲートが開くと、2番枠から出たサイレンススズカがスムーズにハナに立ち、2番手を2馬身ほど離す単騎逃げに持ち込んだ。向正面で2番手との差をじわじわと4馬身ほどにひろげ、3、4コーナーを回った。4コーナーでグラスワンダーが外から進出してきたが、並びかけることができないまま直線へ。