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スピードスター永井謙佑に追われるという恐怖 「DFとして嫌」は“裏”よりも高速プレス 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byJ.LEAGUE

posted2020/10/28 11:03

スピードスター永井謙佑に追われるという恐怖 「DFとして嫌」は“裏”よりも高速プレス<Number Web> photograph by J.LEAGUE

そのスピードで相手ゴールを陥れる永井謙佑。対峙するDF陣たちに聞くと、彼の高速プレスにも手を焼いているようだ

「迷った瞬間がチャンス」

 コースだけではなく、寄せるタイミング、方法にも永井のこだわりがある。

「バックパスだったら、ボールを受けた選手が周りを確認するタイミングでスピードアップする。(相手が)トラップした瞬間にちょっとヘッドダウンするじゃないですか、そのタイミングでグッと寄せて懐に入ると、相手がワンテンポ、ツーテンポ遅れる。このタイミングで僕の後ろのチームメイトも狙いがはっきりしてくる。その寄せ方もボールに対してダイレクトに行く時もあれば、わざと外からプレスをかけに行って、相手がボールを持ち上がった時に、角度を変えて一気に斜めにプレスをかけることもある。

 そういうプレスは、相手のボランチに対して味方の選手がある程度寄せている段階で、パスコースの先までつぶせる状況になった時だけ。この状況で外からプレスをかけて前に運ばせれば、持ち上がった選手はボランチにパスを出すことができないので、ちょっと迷うんです。その迷った瞬間がチャンスなんです」

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 緻密な狙いがある罠だからこそ、相手は「気付いたら嫌な場所にいる」と語るのだろう。

7分間の猛追、守備の起点に

 それが顕著に現れたのはJ1第17節ベガルタ仙台戦だった。この日はベンチからのスタートで、出番は1-0で迎えた88分。アディショナルタイムを加えると、たった7分程度の出場となったが、その短い時間でもきっちりと相手を恐怖に陥れた。

 永井の猛烈なプレスに対して、仙台は攻撃の糸口を見出せずにそのままタイムアップ。この7分間をこう振り返る。

「あの時期はよくアディショナルタイムで失点して勝ち点を失っていた。前線がしっかり追うことで後ろの戦い方がよりはっきりしてくるなと思ったんです。周りも疲れている終盤でしたし、奪うというよりは相手に縦パスを出させないことを意識していました。そうすれば相手は後ろで回す時間が増えるので、このスコアのままタイムアップに持ち込むことができると思った」

 スタメンで出場した第22節清水エスパルス戦でも存在感は際立った。9分、自陣右サイドのMF高萩洋次郎から前線へロングキックが送られた。永井の前にいた清水CBヴァウドはペナルティーエリアの外に出てきたGK梅田透吾へ頭でのバックパスを選択した。

「高萩選手が蹴った段階でボールの周りに僕しかいなかった。梅田選手からヴァウド選手へリターンパスを出されてしまうと、味方が誰もプレスに来ていないし、自分が剥がされてしまう形となって失点のリスクが高いカウンターを受けると思ったんです。だから、僕から見て左後ろにいるヴァウド選手へのパスコースを切りました。右側に開いたもう1枚のCB(六平光成)に出してくれれば、高萩選手のプレスが間に合ってミスを誘発できると思った」

 永井は梅田とヴァウドの間に入り込んでからプレスのギアを上げた。狙い通り、梅田は六平に浮き球のパスを出した。後ろ向きの体勢でトラップすることになった六平に今度は高萩がプレスを仕掛け、その次のパスが出ると、連動してプレスに来たFW田川亨介がボールを奪い取った。まさに永井の頭脳を起点とした緻密な守備だった。

【次ページ】 ストライカーとしての仕事にも好影響

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