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スピードスター永井謙佑に追われるという恐怖 「DFとして嫌」は“裏”よりも高速プレス
posted2020/10/28 11:03
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE
J1の並み居るDF陣から恐れられる人間がいる。FC東京が誇るスピードスター・永井謙佑だ。相手の隙をつき、裏のスペースへ飛び出す速さは一度ギアを入れたらそう簡単には追いつけない。それはロンドン五輪など世界の舞台でも実証済みである。
近年、彼の評価をより高めている要因として「高速プレス」が挙げられる。つまりは、永井の前線からの守備だ。
背後や死角から気配を消して近づき、DFからすれば気づいた時にはすぐそこに居る、という感覚。慌てて対応しても、スピードを維持したまま“カク、カク”と角度を変えて何度も襲いかかってくる。J1でレギュラーを張るセンターバックたちも永井の存在が「嫌だ」と口をそろえた。
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「永井選手は『ここまでは来られないだろう』というところにまで来るんです。横浜FCとの試合を見て、小林友希選手が奪われそうになったシーンがありましたが、やっぱり速い。DFとしては嫌ですね」(名古屋グランパスDF中谷進之介)
「永井選手はスピードだけではなくて、プレスの掛け方もうまい。物凄く頭が良いんです。むやみに追うのではなく、ちゃんとその後の展開まで計算してくるので、一度捕まると本当に怖いFWだと思います」(サガン鳥栖DF原輝綺)
昨季はがむしゃらに追っていた
永井の高速プレスは、昨季あたりから一気に進化した印象を受ける。この変化の裏側には何があったのか。
「若い時は少々無理しても追えていたんですけれど(笑)。年齢を重ねていくごとに、きちんとした立ち位置を取ることで、チームとしての守り方だったり、『ここにいればパスは通されない』というのが分かってきたんです」
プロ10年目の31歳。ベテランの域に達したことでスピードへの考え方も変化してきた。そのきっかけとしては一昨年に指揮官に就任した長谷川健太監督の存在が大きい。長谷川監督は就任早々から、FWに前線からのプレスと素早い攻守の切り替えというタスクを求めた。当時29歳だった永井は自身のスピードを発揮すべく、がむしゃらに追った。しかし、壁にぶつかった。