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「中村君は新幹線、僕は山手線かな」三宅諒の“年齢なりのピーキング”と18歳中村輪夢を羨む理由 

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田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph byWataru Sato

posted2020/10/11 06:00

「中村君は新幹線、僕は山手線かな」三宅諒の“年齢なりのピーキング”と18歳中村輪夢を羨む理由<Number Web> photograph by Wataru Sato

この日、初対面だったという三宅と中村。年齢も競技も違うが、それぞれの考え方に刺激を受けたようだ

中村は東横線、三宅は山手線?

――東京オリンピックに向けたピーキング、そして今後のキャリアについても聞かせてください。

中村 昨年、世界チャンピオンになることができましたが、競技人生のピークは22、23歳ぐらいかなって思っています。その意味ではまだまだここからだなと。当然、東京でも(金メダルの)チャンスはあると思っています。

――東京オリンピックへ向けた体のバロメーターはどう考えていますか。

中村 あんまり考えていないですね。常にMAXで挑んで、逆に考えないぐらいがちょうどいいのかなって。

三宅 いい、それでいいんです。体力的な面で見ても伸び代があるし、何よりやれば、やるだけ進歩がある時ですからね。

――三宅選手はピーキングをどう考えていますか。

三宅 いまの中村君をイメージすると東横線の特急に乗っている感じ。ちなみに僕は山手線です(笑)

中村 どういうことですか?

三宅 渋谷から横浜までほとんど止まらずに一気にビューンと進める。終点が見えないほどどんどん強く成長している中村君が乗っているのは新幹線かもしれませんね。でも僕のように年齢を重ねてくると、「山手線」のような各駅に止まる列車に乗り、どこで降りるかをより深く考えるようになります。目的地を渋谷駅だと決めたら、代々木駅や原宿駅あたりで降りる準備を始める。もし1つ駅を乗り越すと、渋谷に戻るためにはグルッと回らないといけない。ベテランと呼ばれる人たちは、ちゃんと目的の駅で降りることさえできれば強いんですが、タイミングがずれたり、駅がたくさんあるとそれが難しくなるんです。

中村 僕もよく歳上の選手と練習しているので、感覚として理解できました。歳下の選手の方が、勢いがあるというか。

三宅 ここぞ、という場面で発揮できる力が弱くなってくるわけです。ベテラン選手で活躍している選手は多いですが、でもその選手が毎試合毎試合にピークを持ってきているかというと、少し違いますよね。まあ、吉田(沙保里)さんや北島(康介)さんなど常に勝ってきた人たちは別として……(笑)。僕たちは山手線の駅の数を絞る、要は目的を明確にして、そこに向けた準備に集中する。山手線の円が小さくなれば、たとえ間違えてもすぐに戻ることができますからね。それがピーキングなのではないかと思っています。一方で、それは先ほど話したマニュアル化にも繋がるんですよ。年齢を重ねていく上でぶつかる壁ですね。

延期は「成長できる時間」でもある

――将来、2020年と2021年の2年間を振り返った時、どんな時間だったと振り返ると思いますか。

三宅 僕にとってはここから能力を飛躍的に伸ばすというよりは、微調整する段階。新しい技など、マイナーチェンジは当然ありますが、立場として「次に伝える」ことが視野に入っています。この2年間の経験は「こんな時もあった」という次世代への励ましの材料になるのかなと。中村君はどうですか?

中村 来年オリンピックが開催されたらBMXフリースタイルでは最年少で出場することになります。年上の方々からすれば今年開催されたほうがよかったと思いますが、僕はまだ常に世界の表彰台に立てているわけではありません。もちろん延期は残念でしたが、そういう意味で言えば成長できる時間ができたとも考えられる。今年は練習しかできていませんでしたが、昨年よりも上手くなっている実感はありますし、それに(300日前なので)まだ練習できるという気持ちもあります。本番でいい結果を残せることができれば、この2年はありがたかったと振り返るかもしれません。

三宅 いいですね。僕もロンドンの時はチーム最年少でしたから、気持ちはすごくわかります。僕もここからもう一段階強くならないといけないし、そうなった時に、ようやく今の年齢との向き合い方について、もう少し言葉にすることができるかなと思っています。今日はとても楽しい時間でした。

中村 僕も別の競技の方とお話しできる機会は少ないので、とても新鮮でした。ありがとうございました。

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