令和の野球探訪BACK NUMBER
卒論はドラフト会議のマッチング研究 文武両道を地で行く筑波大理系右腕に注目
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/10/03 11:00
体育専門学群ではなく、筑波大・理工学群の社会工学類に所属する奈良木。大学ラストシーズンで頭角を現してきた
多忙な毎日はむしろプラス?
理系で授業や実習も多いが「それは承知の上だったのでプラスに捉えました」と奈良木は言う。
「全体練習で“やらされる”練習になってしまうより、自分の時間が増えると思いました。最低限の決められたメニュー以外は高島さんから教えてもらったトレーニングがベースで、あとは高島さんのYouTubeを観ています」
練習に遅れて参加することが多いからこそ、今自分に何が必要かを考えてトレーニングをしてきた。高島氏の考えを奈良木は「これまでの概念を壊してくれました」と言う。投げ込みなど野球の練習ばかりをして野球が上手くなるのではなく、トレーニングで上手くなるための筋力や身体操作性を高めることにも力を注いだ。
巨人三軍を抑えたカットボール
こうして作り上げられた強靭な肉体で力強い球を投じられるようになった。この春はリーグ戦が中止となって披露する場はなかったが、8月22日に行われた巨人三軍との試合では1イニングをしっかり抑えた。
川村監督は「プロがワンチャンあるならここだぞと言って送り出したのですが良い球を投げていました。最近の練習でも凄い回転数が出ています」と話す。
そして川村監督も奈良木も飛躍の要因に挙げたのはカットボールだ。縦に落ちるものと横に曲がるもの、2種類のカットボールを習得。これを130キロ台後半から140キロ台前半で投げるため、ストレートに近い速さと軌道に打者はミートが難しくなった。リリースで「切る」イメージで投げるカットボールは、腕が横振りになってしまうリスクのあるスライダーよりも、追求してきたストレートの良さを殺さずに投げることができた。
一方で奈良木は今年になってからの飛躍を「何か特別なことをしたわけではありません。4年間継続してやってきたトレーニングをやり切った中で、体が強くなりようやく結果がついてきた印象です」とも語る。
また授業と練習で忙しかった日々も「ダラダラする時間が無かったのも良かったです。勉強も野球も本気で取り組み、中途半端にしたくない思いが強かったので」と大いに活かすことができたと振り返る。