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「栃木はニューヨークよりも親切な町」7年前ロシターを決断させた田臥勇太への“質問攻め”とは 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byShunsuke Mizukami

posted2020/09/29 15:00

「栃木はニューヨークよりも親切な町」7年前ロシターを決断させた田臥勇太への“質問攻め”とは<Number Web> photograph by Shunsuke Mizukami

チームメイトとしてプレーするのは今季が8シーズン目となる田臥(左)とロシター。Bリーグ開幕シーズン以来の優勝を狙う

 7年前、ロシターは、ブレックスとの契約を決める前に田臥と電話で話し、ブレックスというチームのことや、栃木での生活環境について色々と質問攻めにした。

「あの時の僕は日本のことは何も知らなくて、勇太に、とても基本的な質問をしたのを覚えています。彼自身がアメリカでの生活を経験したことがあり、外国で暮らし、違う文化のなかで生活することがどういうことかわかっていたので、僕の質問の意図もすぐに理解してくれたのは助かりました」

 実は、ロシターは、田臥と電話で話す前に、インターネットで田臥の経歴を検索していた。そのときに見た動画のなかには、Dリーグの下積み時代のものもあった。

「YouTubeで勇太がDリーグでプレーしている映像や、モーテルで洗濯している映像を見たことがあります。それと比べたら、僕の日本での生活は、いい家にも住めているし、まったく大変じゃないですね。でも、世界の反対側に暮らすということの苦労という点ではお互いに理解できるところはあると思います」

NBA経験者なら誰でも成功できるわけではない

 異文化のなかで生活することは決して簡単なことではないが、一方で、楽ではないからこその実りもある。

「確かに、世界についての視野が広がり、ほかの人の文化、生活について理解できるようになりました。それまでの人生をずっと過ごした土地を離れて外に出ることで知ることもあります。いつもアメリカの友達に言うのは、日本ではみんながとても丁寧で、敬意を払って接してくれるということ。アメリカ人も、もっとそうあってほしいと思うぐらいです」

 バスケットボール大国のアメリカから来たからといって、誰でもBリーグで成功できるわけではない。NBA経験がある選手でも、バスケットボールのレベルがアメリカより低い日本を最初から見下し、特に努力しなくても活躍できると高をくくるような姿勢だと、結果的に何もできずに去っていくことになる。

ロシターが練習30分前に行くとそこには……

 ロシターの場合は、日本に来る前からチームメイトについて調べ、到着してからは土地に馴染もうとし、まわりから学ぼうとする姿勢があった。その姿勢はコート上の成功にもつながっている。

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