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「栃木はニューヨークよりも親切な町」7年前ロシターを決断させた田臥勇太への“質問攻め”とは
posted2020/09/29 15:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Shunsuke Mizukami
「ライアン、栃木は好きかい?」
田臥勇太が、ライアン・ロシターに聞いた。
答えは、聞くまでもなくわかっている。7年前にアメリカから来たロシターは、今ではすっかり栃木になじみ、ニューヨークではなかったような近所づきあいも満喫している。田臥も、そのことをよく知っていた。
「アメリカ以上に日本がホームのよう……」
そういえば、3年前に取材したとき、ロシターは栃木の土地柄についてこう話していた。
「栃木はみんなが歓迎してくれて、親切な町。僕はニューヨーク出身で、あの町もいいところだけれど、親切な空気があるところではないから……。栃木での生活では、(日本語が話せないため)ご近所さんと話をすることはできないけれど、毎日、顔を見るとお互いに手を振ったり挨拶したりしているんです。特に子供たちはいつも僕のところに来て、挨拶してくれて、買い物から帰ってきたときだと、何が入っているか覗いたりね。それが楽しい。すごく暖かく、歓迎してくれる文化があります」
去年12月に日本国籍を取り、そのために日本語も猛勉強したので、今では近所の人とも簡単な会話はするようになっているかもしれない。
「今はもう、アメリカ以上に日本がホームのような感じがしています。それだけ、ここで暮らすことに慣れて、楽になってきました」とロシターは語る。
「勇太がモーテルで洗濯している映像を見ました」
バスケットボールをするために生まれ育った国を離れ、言葉も文化も違う国で生活をするというのは、田臥自身も経験があることだ。だから、それがどれだけ大変なことなのかをよくわかっている。自分が大学進学のためにハワイに移り住んだときのことを思い出し、「最初は適応するのが大変だった」と、田臥は振り返る。
「でもライアンがすごいのは、あっという間に日本に慣れて、自分なりの生活スタイルを見つけているところ。そうやって溶け込んでいるから、栃木の人たちからも好かれているんですよね」