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フィリピン大学No.1バスケ選手があえて日本の“地方チーム”を選んだ理由…Bリーグ「アジア特別枠」とは
posted2020/09/27 17:00
text by
青木崇Takashi Aoki
photograph by
Tristan Tamayo
Bリーグが今シーズンから新たに設けた「アジア特別枠」は、“BREAK THE BORDER(前例を笑え!常識を壊せ!限界を超えろ!)”というスローガンを掲げるリーグの新たなチャレンジだ。
中国、チャイニーズ・タイペイ、インドネシア、韓国、フィリピンのパスポートを持つ選手が対象となり、通常の外国籍選手とは別に、アジア特別枠(もしくは帰化選手のいずれか)1名を登録・試合エントリーできるこの新制度には、Bリーグとして様々なアジア人選手と対戦する機会を作ることで競争力アップを狙う意図と、市場拡大を目指したマーケティング戦略の意味合いもある。
フィリピンの大学No.1プレーヤー
この新制度でBリーグ入りした最初の選手が、今年の6月下旬に三遠ネオフェニックスと契約を結んだサーディ・ラベナだ。ラベナは昨シーズンまでアテネオ・デ・マニラ大でプレーし、フィリピン大学体育協会(UAAP)選手権を3連覇、史上初となる3年連続MVPに選出された経歴を持つ、フィリピンの大学No.1プレーヤーだ。
一昨年から昨年にかけて行われた前回のワールドカップ予選に2試合出場するなど、フィリピン代表としての経験を持つ23歳のガードは、身体能力の高さを武器にオールラウンドなプレーを持ち味としている。
身長は189cmだが、ドライブから豪快なダンクを叩き込めるなど非凡な得点センスに加え、ヘルプからのブロックショットといったディフェンスでもインパクトを残せる。UAAP選手権で史上初の3年連続MVPという実績が示すとおり、ビッグゲームで活躍できる点は見逃せない。フィリピンの国内リーグPBAにドラフト・エントリーしていれば、全体1位で指名されることが確実視されていた。
フィリピンにおいてバスケットボールは国技であり、PBAの試合で5万5000人収容のフィリピン・アリーナが満員の観客で埋まっても不思議ではない。フィリピンで生まれ育った男の子の多くは、貧困から抜け出すためにプロ選手になることを大きな夢に、プレーグラウンドでバスケットボールに明け暮れる。
もともと野球とバドミントンをやっていた
ラベナのバスケットボール人生は、元PBA選手で現在TNTカトロパのヘッドコーチを務める父のボン、NLEXロード・ウォリアーズに所属する兄キーファーの存在が大きく影響していたという。